東京オリンピックのとき、もう写真家はいないのではないかと業界では噂されている。みんな動画を撮って、後から理想の写真を切り出すようになるのではないかと。ウサイン・ボルトがゴールする決定的瞬間も、10秒の動画から切り出せばよいのだから。
フォーカスが後から選べるというのも、1枚の写真に両方の情報が残っているわけではなく、フォーカスセレクトという機能をONにしてシャッターを切ると、フォーカスポイントをずらしながら複数枚の写真を残してくれて、後でそのなかから最適と思われる写真を後から選ぶことができる。ピントをどこに合わせようかと迷う必要がない。
レンズはとにかく素晴らしい。
キレがあり、歪みがなく、隅々までシャープ。色も自然で美しい。絞りのクリック感など仕上げは見事で、扱っていて喜びを感じる。
とくに12mmF1.4のエッジの立ち方と、15mmF1.4の絞り開放でのまろやかなボケは、特筆に値する。さすがはライカ。質感を重視して派手さを抑えた絵作りが、そのレンズの素直な描写を後押ししている。
こういったレンズを楽しみたいと思ったら、なるべく荷物を軽くするためカメラだけを持って、身近な街を散歩してみるといい。クリアなレンズを通して見る街に発見が多い。ズームとは違ってフットワークが必要になるため、対象と深くコミットできる。
12mmは狭い路地で建物を撮るときなどに最適だ。洒落た看板などを見つけたら15mmに変えてみる。歩き疲れたらカフェに入って、コーヒーを飲みながら4Kで撮った動画から最高の一枚を切り出すのもよい。
ボディは重厚で、見た目の印象よりもずっしり重い。
細かいことは考えず、最初のうちは動画を撮るようにカメラを回し、最適な一枚を選び出すようにして、慣れてきたら一枚に集中して撮ると良いと思う。
ダイヤルやファンクションにいろんな機能を割り振ることができるので、自分なりのカメラに育てていく楽しみもある。
(文・写真/内田ユキオ)
1966年、新潟県両津市(現在の佐渡市)出身。公務員を経てフリーに。タレントなどの撮影のかたわら、スナップに定評がある。執筆も手がけ、カメラ雑誌や新聞に寄稿。現在は写真教室の講師も務める。自称「最後の文系写真家」。データや性能だけではないカメラの魅力にこだわりを持つ。
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