◎Point2:ルックスが変わった
一見して分かるとおり、86“KOUKI”は顔が変わりました。これがドラスティックです。
従来モデルの顔は“逆”ハの字形だったのですが、これが“正”ハの字形になり、さらに、グリル開口部が横方向へ広がったため、見た目に低くワイドになりました。この見た目の変化が、空力性能の向上をシンボリックに表しています。
いまやモータースポーツの分野では、空力性能の良し悪しが勝敗を決するほど。86は従来から空力を意識したクルマでしたが、86“KOUKI”ではそれをさらに突き詰めています。
空気の流れで車体を上下と左右から挟みこむようにし、安定性を高めながら回頭性をアップ…。“エアロハンドリング”なるネーミングを与えられたこの空力特性を、ハンドリング性能アップの“機能”として活用しています。
86“KOUKI”の顔をよくよく見てみれば、バンパー下部にノーズフィンと呼ばれる突起が付いており、フォグランプの位置にもレーシングカーのような“カナード”状のフィンが加わっています。このカナードには、コーナリング時に車体を安定させる働きがあります。
また「G」「GT」「GT“Limited”」という3グレードをラインナップしていますが、最上位のGT“Limited”にはウイングタイプのリアスポイラーまで備わります。
つまり86“KOUKI”は、外観の形状が変わった以上に、空力特性も大幅にアップ。この点ではもはや、従来の86とは別物といっても良いのかもしれません。
◎Point3:カルチャーになった
2012年に86が発表された時、そこにはさまざまな仕掛けがありました。
というのも、スポーツカーというハードウェアを世に出しただけでは、カルチャーというソフトは養生されないとの過去の苦い経験が、トヨタにはありました。なのでそれを回避すべく、トヨタが着火剤としての仕掛けを用意したのです。そのひとつが、オーナーイベントの「86S(ハチロックス)」。
今では、海外でもオーナーが主体となって86Sを開催。国内では、毎週末どこかのエリアで、86オーナーが集う状況ができているそうです。
発売以来、86の販売台数は、全世界で累計16万台(兄弟車であるスバル「BRZ」も含めると20万台)を超えました。
実は、この数字には大切な意味があるそうです。86を自分好みにカスタマイズしたり、チューニングしたりすることは(当然、合法の範囲で)かつてないほどトヨタも応援しています。
86がたくさん売れれば、街を走る86の台数が増え、アフターパーツメーカーも86用のパーツをたくさん開発する…、という良い流れになります。パーツが増えれば、ますますクルマとそれを取り巻くカルチャーが盛り上がるのは、これまでにも多数、好例があること。
アフターパーツメーカーが「これは商売になるぞ」と開発に着手する分岐点は、販売台数10万台なのだとか。86はすでにそれを超えています。
つまり、86“KOUKI”を手に入れるということは、その周辺に花開いている86カルチャーをも手に入れられる、ということ。このカルチャーはもちろん、無料で標準装備されています。
<SPECIFICATIONS>
☆G 6MT
ボディサイズ:L4240×W1775×H1320mm
車重:1210kg
駆動方式:FR
エンジン:1998cc 水平対向4気筒 DOHC
トランスミッション:6速MT
最高出力:207馬力/7000回転
最大トルク:21.6kg-m/6400〜6800回転
価格:264万7080円
(文/ブンタ 写真/グラブ、トヨタ自動車)