“EV”で“軽”の日産「サクラ」!そのメリットを享受できるのはどんな人?どんな使い方?

■そもそも、日産サクラってどんなクルマ?

日産といえば量産EV(電気自動車)の先駆け「リーフ」を手がけた自動車メーカー。最近ではSUVタイプのEV「アリア」を発売するなど、EVのラインナップを拡大しています。そして、「サクラ」は現時点におけるEVラインナップの末っ子モデルとして加わった軽の電気自動車です。

軽自動車といえば日本独自の規格で、全長3400mm以下、全幅1480mm以下、全高2000mm以下、排気量660cc以下、定員4名以下という条件を満たす必要があります。

サクラはというと、全長3395mm、全幅1475mm、全高1655mmと車体サイズは規格内にあります。では、動力源がモーターの場合はどうなるの? というと、最高出力を自主規制枠である47kW(64馬力)として、軽自動車規格に収めています。

エクステリアは薄型ヘッドライトやワイドなテールランプなど、アリアにも通じる次世代日産車に通じるイメージとするなど、ちょっと大人で上品なイメージ。

インテリアは7インチ+9インチの統合型インターフェースディスプレイを採用するなど、機能性にこだわるだけでなく、手触りの良い高品質ファブリックを広範囲に用いており、質感の高い仕立てとなっています。

さらに、ADAS(先進運転支援システム)も充実しており、高速道路単一車線での自動運転技術「プロパイロット」、駐車時にステアリングやアクセル操作などを自動で制御する「プロパイロットパーキング」も設定されています。

気になるのは価格ですが、サクラは3グレードが設定され、ベーシックなSが233万3100円、中間グレードのXが239万9100円、上位グレードのGが294万300円という設定となっています(いずれも消費税込み)。

となると、同じ日産の軽「デイズ」の約100万円増し。「EVとしては価格も手頃だけど…」と思ってしまいますが、政府の「クリーンエネルギー自動車導入促進補助金」により、55万円の購入補助が受けられるので、Sグレードで約178万円、Xグレードで約185万円と、デイズの上位グレードとほぼ同価格となります。さらに、自治体による補助金制度がある地域では、購入時の負担がさらに減る可能性もありそうです。

■サクラにピッタリなのはどんな人?

補助金まで計算に入れると、新車のEVとしては手が届きやすい存在となった「サクラ」ですが、万人にオススメかと問われれば、やっぱり、ちょっとしたハードルもあります。まずはWLTCモードでの航続距離が180kmであることでしょうか。

サクラが搭載するバッテリーサイズは20kWhと、リーフの1/2〜1/3ほどの容量です。リーフの40kWhバッテリー搭載車では航続距離322km、60kWhバッテリー搭載車では450kmですから、サクラの180kmは良好な値とはいえるでしょう。

日産によると軽自動車ユーザーの場合、1日の走行距離は30km以下が多く、これなら5日に1度の「自宅充電」でまかなえるとのこと。そして、180kmの航続距離はクルマを使用する日常シーンの94%をカバーできるそうです。

こうした想定からざっくりとした使い方を考えると、平日は通勤や送り迎えで1日30km、月イチでお出掛け先での充電を伴う200kmほどのドライブ旅行に行く、そんな組み合わせが現実的な線でしょう。ちなみに、月間走行距離で考えると、上のパターンで800km前後になります。

また、サクラの場合「自宅充電」も大事なポイントとなります。充電設備として手軽な充電能力3kWの200Vコンセント+コントロールボックス付き充電ケーブルを使用すると、バッテリー残量警告灯が点灯した時点から約8時間で満充電、お出掛け先にある急速充電器では、残量警告灯点灯から約40分で充電量80%まで回復可能です。

自宅充電の場合、200Vコンセント+充電ケーブル(充電能力3kW)、壁掛け型などの6kW普通充電器(充電能力6kW)、EVに蓄えた電気を家庭で使えるV2H(ビークル・トゥ・ホーム/充電能力6kW)が一般的な選択肢となります。

いずれも基本的に専門業者による電気工事+設備が必要ですが、充電ケーブル用の屋外コンセントでは約10万円、6kW普通充電器は約30~35万円、V2Hは50~90万円ほどが目安になります。

もうひとつ気になる燃料代ならぬ電気代ですが、日産のwebサイトには充電費用シミュレーターがあるので、試してみましょう。先に挙げた月800km、遠出が1回の場合、バッテリーサイズ20kWh、電費8km/kWh、自宅充電機有り、電気代26円/kWhの場合、月額で4068円になります。一方、ガソリン車の場合、燃料代が仮に160円/リットル、燃費22km/リットルで計算すると約5800円ですから、EV有利でしょうか。

また、50~60kwhを超えるバッテリー容量の大きなEVでは普通充電器+外部の急速充電器という使い方が多いようですが、サクラであれば200Vコンセント+充電ケーブルという"最小構成”でEV生活に踏み出せます。しかし、住環境に依存するのも事実で、賃貸マンションでは充電ケーブル用の200Vコンセントの設置も簡単ではありません。

とはいえ、都市近郊のベッドタウンや近県ではガレージスペースのある戸建て住宅が多数派ですし、通勤・送り迎え用セカンドカーと考えれば、サクラのような近距離型EVは価値ある存在です。

また、出先への行き帰りにガソリンスタンドに寄らずに済むというのも、注目を集めている田舎暮らし派との親和性も高そうです。地方都市やその近郊、ちょっとした別荘地でもガソリンスタンドまでの往復や寄り道って意外に面倒ですからね。

ちなみに、総務省による2018年のデータによると、日本の一戸建て比率は都道府県の平均値が64.4%、マンションなど共同住宅は32.7%であるのに対して、東京都は一戸建て26.8%/共同住宅71.1%、大阪府は一戸建て40.7%/共同住宅55.4%となっています。これらのデータを見ると、都市部でEVが普及するには充電施設が公共インフラとして充実するのを待たねばならないのも事実。夏場や冬場は電力需要ひっ迫というニュースも度々見かけますから、送電網も含めて政府には頑張ってもらいたいところ。

また、近年話題のLCA(ライフサイクルアセスメント)、つまりクルマの製造から廃棄までの環境への影響を考えると、中・大型のEVは必ずしもガソリン車やハイブリッド車に比べて決定的なアドバンテージがあるとはいえません。一方、サクラのように軽量・コンパクトであれば電費でも有利ですし、バッテリー製造など1台あたりの環境負荷も小さいので、環境問題にフォーカスするなら軽EVはEVの中でも地球に優しいモデルといえそうです。

【次ページ】最新EVらしいスムーズで滑らかな走り

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