まだあるギリシャの白ワイン
“モスホフィレロ”
ギリシャ本土南部のペロポネソス半島にあるPDOマンティニアという生産地が有名です。標高650mを超える高地で、日照はしっかりありますが、気候は冷涼です。夜間は気温が下がり、風の影響で湿度が低いため、ブドウ栽培に最適な環境。
モスホフィエロの果皮はピンク色で、辛口やセミドライのスティルワイン、スパークリングワインになります。花のアロマが豊かで、新鮮で特徴的な酸と、あまり高くならないアルコール度数が特徴です。
“ロディティス”
ペロポネソス半島北西部のPDOパトラスでは、辛口白ワインに仕立てられます。ピンク色の果皮のブドウで、標高の高い場所で栽培され、レモンの風味、熟成したメロン、ハチミツなどの強い香りと風味のある、爽やかなワインになります。
“サヴァティアノ”
昔は素晴らしい品種だと思われていませんでしたが、今は生産者が力を入れ、優雅で高品質なワインが造られています。フルーツの香りが強く、酸はあまり高くなく、果実味が濃厚です。複雑味はそれほどないものの、ジューシーでバランスの取れた白ワインになります。アテネの近郊のアッティカ県などで多く栽培されています。
ギリシャを代表する赤ワイン
“アギオルギティコ”
メルロと比較される品種です。色の濃いブドウができやすく、ワインも色濃くなる傾向があります。赤い果実や黒いフルーツの風味があり、飲みやすく、やわらかでソフトな軽いタイプから、長期熟成タイプまで、幅広いワインになります。主要産地はペロポネソス半島東部のネメア。標高200mから900mの高地に畑が広がり、それぞれの標高で個性あるワインが造られています。
“クシノマヴロ”
イタリアのネビオロと比較される品種で、色はそれほど濃くなく、酸が高く、タンニンが豊富です。ワインは複雑味を帯び、長熟の可能性があります。ギリシャのワイン産地で最も冷涼な北部アミンティオと、アミンティオに近いけれど、やや暖かいナウサが有名です。
ギリシャワインの伝統と言えば……
古くからギリシャワインを知る人には、ギリシャワインというと、松ヤニの風味のする“レッツィーナ”を思い浮かべるのではないでしょうか?
500年前(16世紀)、ワインの劣化を防ぐため、ワインを入れた甕(アンフォラ)を松ヤニで封をしたことがレッツイーナの始まりだとか。樹皮から取り出した当初の松ヤニはベタベタしていますが、乾くと固くなります。ちなみに、日本の松とは違う種類だそう。
現代のレッツィーナの造り方は、サヴァティアノやロディティスから造ったワイン1トンに1kgまでの松ヤニを布袋に入れ、アンフォラの蓋の穴に袋の紐を引っ掛けてワインに浸し、香りを移します。浸す期間は生産者によりますが、紹介してくれたワイナリーでは2週間ほどでした。松ヤニはワインには溶けません。
ワインから引き上げた昨年の松ヤニ袋(彼らはティーバッグと呼んでいました)を見せてもらいましたが、蜜蝋のような硬さです。松ヤニ臭がまだ少し残っていました。
過去の記憶から、レッツィーナは松ヤニ臭くて飲みにくいのではと心配しましたが、フルーティーで飲みやすくなっています。オーガニックのレッツィーナも。時代は変わりましたね。それでも好んで飲むのは、やはり年配世代のようです。