ハンドルから各ツールまで、ほとんどがステンレス製。ハンドル部は鈍いグレーの光を放つチタンコーティングが施され、耐傷性に優れた表面処理です。握ると持ち味が良く、ソフトな印象。ハンドルのエッジ部分のほとんどにベベル(斜めの面取り)処理が施され、強く握っても痛くない。長時間作業をしたり、同じ作業を繰り返す時などに違いを感じることでしょう。
プライヤーに近い部分が細く、小指と母指球があたる部分が太くなっています。またハンドル末端にはゴムが貼られており、滑りづらくなっています。わずかな工夫のように思えるかもしれませんが、とてもフレンドリーな仕様に思えます。
先端の細めのニードルプライヤーは細かな作業に適しています。先端部まで滑り止めのセレーションが付いており、細かな部品も把持しやすくなっています。プライヤー部分もしっかりとセレーションが切られており、水道の蛇口修理などマルチな活躍が期待できます。
ワイヤーカッターは、太目のワイヤーや自転車のワイヤーケーブルなどは切れません。細めの単線ケーブルなど電工系のケーブルカッター的なモノだと思います。
メインのプライヤー以外のツールはすべて、畳んだ状態でハンドルの外側にあり、ハンドルを展開しなくても使用が可能です。各ツールの中でナイフやノコギリなのど刃物類はフルサイズモデルに比べコンパクトですね。
各ツールはすべてロック機能が付いています。ハンドルから展開すると自動でロックし、収納する際は、スライドロックを引き下げながら折り畳みます。
ちなみに、ハンドル末端部には収納されている刃物のアイコンが刻印されているので、初めて使う人でも分かりやすい。ただ、ハンドル部は肉抜きされているので、収納されている状態でもツールは目視できます。
ブレードの刃渡りは約32mm。短めだが厚みがあり丈夫です。ハンドルから展開する際は、指で示した部分にある突起を押し上げます。
先端部は錐(キリ)のような使い方ができ、段ボールなどの厚紙でも先端部を刺して手前に引くと簡単に裂けました。小ぶりなブレードなのでケーブルの被膜を切ったり、キャンバス生地やレザーに穴を開けたりすることを得意とします。
直刃の反対側は波刃ナイフになっています。削ぐように切るのに適したナイフです。ナイロンなど滑りやすいロープでもセレーションが引っ掛かり切りやすい。
ノコギリの刃渡りは約4cm。角材などを切ることは難しいですが、小枝などを切るには充分。短いストロークで素早く引くと良く切れます。
小鳥のようなハサミ。展開する際は、ハンドルの肉抜き部から押し出し、ロックがかかるまで完全に展開した後、ハサミのハンドルを戻すと使用が可能になります。マルチツールの取り扱いに少し慣れていないと戸惑うかもしれませんが、マルチツールに装備されたハサミでは、よくある仕様。刃渡りは15mmほどしかありませんが、切れ味は良好です。
ガーバーこだわりのドライバーの形。ツールの形状はシンメトリーではありませんが、実際に使うとセンターはハンドル中央と合致しており、自然に使えます。マイナス、大マイナス、プラス共に実用性は高いですね。
大マイナスドライバーはクリッパーとしても便利。ペンキの缶蓋やスイッチカバーをこじ開けるなど汎用性は高いです。
ドライバー各種の基部付近にはサイズの異なるケーブルストリッパーを装備。ナイフで外皮に切れ目を入れ、切れ目をストリッパーに引っかけて引っ張ると外皮を綺麗に外せます。
ベルトループの付いたナイロンケースが付属。ケース裏面にあるベルトループは縦横両方に付いており、腰のベルトだけでなく、リュックのショルダーストラップなどユーザーが使いやすい位置に装着できます。ツールが入っていない状態でもマチがあるので、出し入れはとても簡単。
折り畳んだ時の全長は約10cm。フルサイズのマルチツールよりひと回り小さく、オーソドックスかつ充分なツールを備えたマルチツールです。ブレード類の長さがさほど必要ないユーザーにとっては、コンパクトで持ち運びやすく、実用性の高いツールがそろっています。
軽さに関しては賛否が分かれるところ。肉抜きされた外観の割には重く感じました。重量は約188g。各ツールしっかりとした厚みがあり、すべてステンレス鋼であることも原因のひとつかと思います。
品名であるサスペンションは、訳すとバネとなりますが、車やバイクのサスペンションの役割は路面への「追従性」を目的としたパーツです。つまり、日常のちょっと困ったことに対応できる追従性を狙ったマルチツールではないかと思います。品質、性能、価格とも優秀。キャンプからDIYまでマルチに対応したモデルです。
<取材・文/GOL>
GOL|歯科技工士、ECディレクター、webライターまで幅広く活動しております。指先に伝わるハンドツールの質感や重さ、音などアナログな部分に惹かれて今に至ります。一番好きなのは懐中電灯。
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