レプリカ世代のライダーにおすすめ!ヤマハ「YZF-R7」は 尖ったスタイルだが扱いやすい特性

実際、「YZF-R1」など1000ccクラスのスーパースポーツは、レースでの勝利を目指して開発されているので、公道ではその性能を味わうことは困難です。200PSを超えるエンジンパワーはもちろん、レーススピードを想定して設計された足回りも、公道で使うにはオーバースペック。一方「YZF-R7」は、688ccの並列2気筒エンジンを搭載し、最高出力も73PSと抑え気味で、車体も細身に仕上がっています。

ベースとなったのは同社のストリートスポーツ「MT-07」。フルカウルをまとっただけでなく、フロントには倒立タイプのフォークを装備し、セパレートハンドルとすることで前傾のライディングポジションとなっています。それに伴い、車体のディメンションも見直され、スイングアームのピボット部を両側から金属製のブレースで補強することで剛性もアップ。「MT-07」のエンジンとフレームを使いながら、全く別のマシンに仕上がっています。

見た目のスタイルは「YZF-R」シリーズの血統を強く感じさせるもの。尖った印象のカウルは空力特性も良く、スリムな車体も相まってかなり走りそうな印象です。シート高は835mmと低くはありませんが、車体が細身でシートの横幅も絞り込まれているので足付き性は悪くありません。

個人的に気になったのはブレーキ。フロントにはラジアルマウントの4ポッドキャリパーをダブルで装着し、マスターシリンダーはブレンボ製で、量産市販車としては初採用となる“純”ラジアルタイプを装備しています。制動力が高いだけでなく、タッチとコントロール性が優れているので、マシンを操る上では重要なパーツです。

 

■サーキットも峠道も楽しめるハンドリング

初めて「YZF-R7」に試乗したのはサーキットでしたが、その扱いやすさと秘めている性能の高さに驚かされました。エンジンパワーはミドルサイズのサーキットでは必要にして十分。リッタークラスのモンスターマシンと異なり、安心してアクセルを開けられるので、スポーツマシンらしい楽しさを(そこまでの腕がなくても)味わえます。

低回転域からトルクがあるので、コーナーに高いギアのまま進入してしまっても、アクセルを大きめに開けるだけでしっかりと立ち上がることが可能。回転域を問わずフラットな特性なので、エンジンの回転数を気にすることなくコーナーリングに集中できるのが、これからサーキット走行などを楽しみたい、あるいはライディング技術を向上させたいと考えているライダーには適しています。

そして、コーナーリングではスリムな車体が倒し込みやすく、それでいてバンク中の安定感も高いので、「次の周回ではもうちょっとがんばってみようかな」とチャレンジをしたくなります。特にフロント周りの安心感がすばらしく、コントロール性の高いブレーキでフロントフォークを縮ませつつ、荷重をかけたままコーナーに入って行くような走り方を気兼ねなく試せました。

これはサーキットも楽しいけど、公道のワインディングも楽しめそうと感じ、峠道まででかけてみましたが、そこでの気持ち良さも抜群でした。リッタークラスのマシンで峠道を走ると、命の危険すら感じることがありますが、「YZF-R7」ではそんな恐怖感を感じずに済みます。トルクフルなエンジンは、先の見えないワインディングのようなシーンにマッチする印象。スリムな車体もタイトな峠道での扱いやすさが光ります。

コントロール性が良いブレーキは、信号待ちで止まるときすら気持ち良く感じるほど。前傾の姿勢は、街乗りや渋滞では少ししんどく感じましたが、信号待ちのたびに腰を伸ばしておけば、筆者のような中年ライダーでも1日乗り回してもギリギリ耐えられるくらい。レプリカブームの頃にバイクに乗り始め、「どうせ乗るならフルカウルのスポーツマシン」と思っている人には、かつてのレーサーレプリカの雰囲気をまといつつ、コーナーリングを楽しめるマシンとしてオススメできます。

>> ヤマハ「YZF-R7」

 

<取材・文/増谷茂樹

増谷茂樹|編集プロダクションやモノ系雑誌の編集部などを経て、フリーランスのライターに。クルマ、バイク、自転車など、タイヤの付いている乗り物が好物。専門的な情報をできるだけ分かりやすく書くことを信条に、さまざまな雑誌やWebメディアに寄稿している。

 

 

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