メインのツールはナイフ、プライヤー、プラス・マイナスのドライバービット、そしてカラビナ。以上。片手で収まるくらいの機能しかありません。これが意味するところは、マルチツールが単なるガジェットではなく、本当に使えるツールであると改めて主張するためのものでした。
スケルツール以降、ツール数至上主義ではない、より専門性と多様性あふれるモデルが数多く登場します。スケルツールは、まさにその第1号とも言うべき革新的なモデルだったのです。
ハンドルを展開して露出するプライヤーは、フルサイズモデルに比べひと回り小さいですが、コンパクトモデルほど小さくはなく、必要充分以上の働きができます。
ハンドルを展開した時におそらく気になるであろう、左右非対称のハンドル。片方にはドライバービットを装着することができ、反対側はカラビナフックになっています。この漢字の「はらい」のようなデザインは実に珍しいものでした。
これは単に奇抜さや審美性を狙ったデザインではなく、明確に意味のある形をしています。
「スケルツール」のプライヤーにはバネによるリバウンド機能がありません。ニッパーのような開閉を頻繁に行うツールでは必須に近い機能ですが、プライヤーは“掴んで保持する”ことが目的のツールです。そのため、開閉のしやすさよりも、しっかりと握れることが最優先されます。そして、漢字の「はらい」のように湾曲した部分には指がかかりやすく、少ない力で対象を把持できるのです。
メインツールであるプライヤーの基部はワイヤーカッターになっています。交換はできないタイプですが、直径1mm以下の単線であれば充分にカットできます。主に弱電工作のケーブルや園芸ワイヤーをカットするのに使えます。
先端には滑り止めの溝が付いています。カットしたワイヤーをプライヤーで掴んでねじる。そんな使い方ができます。日常のちょっとした工作シーンでこのプライヤーは役に立ちます。
もうひとつのメインツールであるナイフは、刃渡り約6.6cm。フルサイズのモデルにも採用される標準的な長さです。素材はアメリカ製の154CMと呼ばれる耐食性に優れたステンレスが採用されています。充分な厚みがあり丈夫で、切れ味は鋭く、紙はもちろん、野菜や肉を切ることも充分に可能。ソロキャンプでの包丁としても重宝するでしょう。
カラビナフックが付いていないハンドルにはドライバービットが挿せる穴が付いています。デフォルトではプラスドライバーが挿さっており、ビットは両端が大小異なるサイズ。また、カラビナフック側のハンドル内側にはマイナスドライバーのビットが格納されており、差し替えて使えます。
このビット、アクセサリーキットでも販売されているので、普段から使用したいビットがあれば、それと交換も可能です。
ドライバーとして使う場合は、このように反対側のハンドルを展開して使います。充分に長い柄になるので、握りやすく力も入れやすいですね。
そして「スケルツールCX」の魅力が、軽さ。
多機能性に優れた同社の「WAVE」や「CHARGE」などのレジェンドモデルと比べると100g近く軽量。感覚的にはポケットナイフにプライヤーが付いている感じですね。それくらい軽く携帯しやすい。キャンプや登山で使うのであれば、ズボンやリュックのベルトループにカラビナとして引っ掛けての携帯が充分に可能。また、背面には鋼製のクリップが付いているのでリュックの内ポケットなどにも挿しやすくなっています。
この軽さ、ツールが厳選されていることももちろんですが、ナイフやハンドル各所が肉抜きされていることも大きい。軽量化とデザイン性を両立させていますね。発売されたばかりの頃は、大胆な肉抜きに強度に対して不安を感じるユーザーの意見もありましたが、現在に至るまで大きなモデルチェンジもなく発売されていることを鑑みても、これは杞憂かと思われます。
そしてシリーズのフラッグシップモデルらしく、ハンドルの表面はDLC(ダイヤモンド・ライク・カーボン)に。これは、従来のアノダイズドメッキや粉体塗装とも異なるダイヤモンドに近い硬度と非常に薄い皮膜を両立した新しい表面処理技術です。
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日本ではいかなる理由があってもナイフを携行することは禁じられています。ですが、あえて言えばこのマルチツールは携行に適したマルチツールです。日常で使用するのに必要充分なツールが揃い、使いやすく軽量。日常使用のマルチツールのお手本のようなモデルです。発売から15年を経てもいまだに大きなモデルチェンジもなく販売され続けていて、アメリカでは日常の携帯マルチツールとして根強い人気を持つモデルのひとつです。
厳選したミニマムな搭載ツールと美しいデザイン。本当に使える最上級のマルチツールを選びたいならオススメの1本です。
>> レザーマン
<取材・文/GOL>
GOL|歯科技工士、ECディレクター、webライターまで幅広く活動しております。指先に伝わるハンドツールの質感や重さ、音などアナログな部分に惹かれて今に至ります。一番好きなのは懐中電灯。
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