■コンパクトながら室内空間は広々快適
全長4712mm、全幅1985mm、全高1938mmのボディと、2988mmのロングホイールベースの組み合わせ。 5人乗りで、荷室容量が1121リッターもある機能性の高さが特長です。
コペンハーゲンで試乗したときのモデルは、77kWhのバッテリーを床下に敷き詰めている仕様でした。航続距離は425kmといいます。
「フォルクスワーゲンは“形態は機能に従う”という原則を貫いてきました。自動車の構造を設計する上で中心的な考え方となっているこのコンセプトは、ID. Buzzのデザインにも当てはまります」
上記はプレスリリースの文言。VW車はどれもパッケージングといって、ボディ外寸はできるだけコンパクトに、室内空間はできるだけ広く採られています。ここは私がいつも感心する点。
ID.BUZZも同様の考えでデザインされたはず。後席にいても、レッグルームもヘッドルームもたっぷりとして居心地がいいのが印象的です。
走りは、ごく低速からトルクがたっぷりあって、2トンを超えるクルマを走らせている感覚はありませんでした。荷物を積めばさらに重くなるでしょうが、この電気モーターならけっこういいペースで走れそうだと、私は思いました。
バネ上重量がそれなりに重いだけあって、乗り心地も快適です。ぽんぽんっと跳ねません。路面のうねりにあおられることもないし、凹凸もていねいに吸収してくれるのです。
前席だけ頭上(ルーフ前端あたり)に風があたる音がやや大きく響く印象はありましたが、基本的には室内の静粛性は高い。乗っている人は、音楽や会話をたっぷり楽しめそうです。
■ボディも内装も楽しい気分になれる2トーン
ドライブコースは、コペンハーゲンを出て、エーレスンド海峡を橋でわたってスウェーデンはマルメ近くまで、というもの。途中やたら目立ちました。
北欧はピュアEVが多いと聞いていましたが、たしかに世界各国(とりわけ欧米)のEVが走っています。ドライバーたちはID.BUZZに注目しているようで、笑顔で手を振ってくれる人もいました。
停車すれば駆け寄ってきて「どのぐらいの距離走れますか」と聞いてきます。質問のリアルさで、ほんとうにEVが定着しているんだなあと、私は感じ入りました。
なによりいいのは、インテリアデザイン。VWは、T-CROSSとかT-ROCとか、SUV系のインテリアがなかなか上手。ラテン系のクルマほどやりすぎ感はなく、ロジカルさとエモーショナルさがほどよく両立していなあと、感心しています。
今回試乗したモデルはどれも2トーン。ホワイトとオレンジとかホワイトとイエロー、はたまたホワイトとブルーという塗り分けでした。オリジンは先に触れたタイプ2に行き着くようですが、それらのクルマの内装も基本的に2トーン。
ボディの塗り分けに準じた色づかいが室内にも施されています。快適なクルマはあっても、乗員全員が楽しい気分になれるクルマはなかなかありません。ID.BUZZは貴重なのです。
日本への導入は「検討中」とフォルクスワーゲンジャパン広報部。輸入されると、日本のミニバンとひと味(ピュアEVであるから、さらにもうひと味)違うID.BUZZ、人気が出るのではないでしょうか。サイズも手頃で、VW、いいところをついてきています。
【Specifications】
☆Volkswagen ID.BUZZ
全長×全幅×全高:4712x1985x1938mm
電気モーター:リア1基 後輪駆動
最高出力:150kW
最大トルク:310Nm
バッテリー容量:77kWh
航続距離:425km
<文/小川フミオ>
オガワ・フミオ|自動車雑誌、グルメ誌、ライフスタイル誌の編集長を歴任。現在フリーランスのジャーナリストとして、自動車を中心にさまざまな分野の事柄について、幅広いメディアで執筆中
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