まずはサスペンション。ショックアブソーバーはビルシュタイン社製の車高調整機能付きスポーツタイプを標準装着。約30mmの車高調整幅があり、試乗車は調整範囲の中で最も車高が下がった状態でした。そしてタイヤは、オプションとして設定されているブリヂストンの「ポテンザ RE-11A」。
固めたアシに下げられた車高。そしてスポーツタイヤ…。ガチガチなんじゃないの? と一抹の不安。ところが実際は、リニアなロールやピッチングがナチュラルに感じられるしなやかさがあります。ステアリングホイールを切るとフロントがロールしてからリアが付いていく感じ。ロードスターの持ち味が活きています。ステアリング切ったらパキッとリアが着いてくる反応が好きなドライバーも多いでしょうが、クルマの挙動がいろんな感覚を通じて得られやすい=初心者にも優しい、ロードスターの美点がNR-Aには継承されています。
駆動系には、トルクセンシング式スーパーLSDを採用しています。LSDの効き自体も強化されているようで、よく動くロードスターのアシとも好相性だと思います。
エンジンはドノーマル。これは賛成ですね。エンジンはパワーを上げると熱対策などが必須になります。そうなると、モータースポーツのベース車両にしてはお金が掛かってしまいますから。でも、ドノーマルなのにNR-Aはラジエターが大型化され、冷却性能がアップされています。サーキット走行では高回転を維持する時間が増えますからね。目に見えないところだからこそ、これはうれしい仕様です。
カタログ等では公表されていませんが、ロードスターの駆動系の骨格を構成する“PPF(パワープラントフレーム)”も強化されているとのこと。輸出仕様である「MX-5」は2リッターエンジンを搭載しますが、このMX-5に使われている強化型のPPFが、NR-Aには採用されているという話です。これだけでもお得な感じです。
試乗車にはガッツリとロールバーが付いていましたが、これはオプション。サーキット走行や競技へ参加する場合、ロールケージの装着が定められていることは珍しくありませんので、その気になったら必要な装備です。基本、転倒した時にドライバーを守る安全装備ですが、ボディ剛性アップにも寄与します。
その点、試乗車に付いていたロールバーは、剛性アップに余念がないため、乗り降りする際の間口が狭い! 変な体勢で踏ん張って乗るものだから、フロアカーペットがズレるなんてこともしばしば。準備体操してから乗るのがオススメです。体がツリますよ。
でも、このロールバー装着はオススメです。取付費用込みで21万3548円のオプションですが、ボディにガシッと塊感が出て、ステアリング操作に対し、サスペンションがダイレクトに動くフィーリングが高まります。
加えて、ノーマルモデルよりも大径のブレーキローターが装着されるなど、目に見えるところ、目に見えないところ含め、いろいろとオイシイ仕様になっているNR-A。同様のモディファイを加えるとなると、強化PPFに換装、という無理めなメニューを省いたとしても、ざっくり追加費用は50万円を下らないと思います。なんてオイシイんでしょう。
街乗りでは、上手に引き締められた乗り味に辟易するどころか、ワクワクさせられました。日常使いにこそNR-A、大いにアリだと思うのです。オプションのロールバーを装着すると、乗り降りにかなり難儀しますが、茶室の入り口が低いのと同様、ドライビングへの礼節だと思えば、気持ちが引き締まる思いです。あぁ、もっとNR-Aで走りたい!
<SPECIFICATIONS>
☆NR-A
ボディサイズ:L3915×W1735×H1235mm
車重:1010kg
駆動方式:FR
エンジン:1496cc 直列4気筒 DOHC
トランスミッション:6速MT
最高出力:131馬力/7000回転
最大トルク:15.3kg-m/4800回転
価格:264万6000円
(文/ブンタ、写真/グラブ)
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