ミルスペック準拠「Apple Watch Ultra」を試して感じた良い点、気になった点

■日常使いで気になったポイント

筐体デザインについては、気になる部分が3つありました。1つ目はディスプレイのエッジが結構鋭いこと。これは長袖を着たときにも、文字盤が隠れにくいというメリットを生む特徴ではあります。

一方、勢いよく腕を動かしたときに、人やモノにエッジがぶつかる可能性はやや心配です。他のApple Watchではディスプレイにエッジがないので、家族で川の字で寝るようなご家庭でも睡眠の測定などにも安心して使えるのですが、Apple Watch Ultraではちょっと躊躇します。

Apple Watch Ultra

▲Apple Watch Ultraはディスプレイが飛び出ているので、袖で画面が隠れづらいのは良い

Apple Watch Ultraのエッジ

▲ただし、その分エッジが鋭い。怪我や事故を予防するために腕を振り回したりする可能性がある場面では注意が必要だ

2つ目は、Digital Crown(デジタルクラウン)を回すときに、リューズの一部が肌に当たる場合があること。もちろん、装着位置や押す強さによっても変わるのですが、ふとした操作で肌にグリグリとリューズの溝が当たるのは、少々気になりました。

Apple Watch UltraのDigital Crown

▲Digital Crownの新デザインは格好良いのだが、回すときに肌に触れることがあったのは気になった

3つ目は、アクションボタンを間違って押してしまう場合があること。これは慣れの問題でもありますが、リューズやサイドボタンを押下したいときに、アクションボタンが反対側にあるので、間違って操作してしまうことがありました。

アクションボタンにはショートカット機能を割り当てられるのがメリットですが、誤動作のたびに機能を取り消すのは少々ストレスに感じました。コーナーを押さえるようにすればいいのですが、慣れるまで少しかかりそうです。

Apple Watch Ultraのアクションボタン

▲アクションボタンでのショートカット操作は、ある程度カスタマイズ可能なので、ワークアウトの開始操作やウェイポイントの登録操作など、頻繁に使いたい機能を配置しておいたり、コンプリケーション(文字盤に配置できるアプリショートカット)に収まりきらない機能を配置しておけば便利。ただし、従来モデルに慣れていると、ボタン配置に慣れないうちは誤操作しやすいかも

 

■バッテリー持ちについて

今回の検証期間では登山やダイビングを試せなかったので、1時間の「屋外ウォーキング」(常時表示オン、モバイル通信はなし)で、バッテリーが何パーセント減るのか検証してみました。

Apple Watch Ultraでワークアウト

▲Apple Watch Ultraで屋外ワークアウト。輝度の高くなったディスプレイは視認性もバッチリ

ワークアウト開始時に89%あったバッテリー残量は、1時間で81%まで減りました。つまり、GPSを有効にした屋外ワークアウト1時間で8%のバッテリーが減ったことになります。

Apple Watch Ultraの画面

▲屋外ウォーキングスタート時のバッテリー残量(左)と約1時間後のバッテリー残量(右)

もし、バッテリーの消費速度が一定だと仮定すると、バッテリー残量が100%の状態から12時間のワークアウトを実施すると4%まで減ることになります。Apple Watch Ultraでは、「GPSを使用した屋外ワークアウト」で最大12時間利用できるとされていますので、看板に偽りなしと判断して良さそうです。

1km12分くらいのペースで42.195km歩いた場合でも、8時間半弱なので、どれだけ遅くてもフルマラソンは余裕で記録できますね(ちなみに、Series 8だとGPSを使用した屋外ワークアウトで最大7時間しか持たないので、フルマラソンの距離を歩いた場合は、途中で電池が切れる可能性が高い)。

watchOS 9で追加された「バックトレース」(GPS情報を使ってユーザーが移動した経路を表示する機能)を有効にした状態でも、屋外ウォーキングを試してみましたが、こちらも約1時間で77%から69%へ変化。減り幅は8%で変わりませんでした。どうせ屋外ワークアウトを使うならば、バックトレース機能は気兼ねなく使えそうです。

バックトレース機能

▲watchOS 9のコンパスアプリで使える「バックトレース」機能は、通ってきた経路を記録でき、現在地からスタート地点までの方向を確認したり、通ってきた道を辿って戻ることにも使える。分岐点などがある場合には、「ウェイポイント」と呼ばれる特定の緯度経度の地点として登録しておくと距離感がつかみやすい

バッテリー残量の記録

▲バックトレースをオンにした状態での屋外ウォーキング開始時のバッテリー残量(左)と約1時間後のバッテリー残量(右)

とはいえ、例えば初心者が富士山に登る場合、登りで8時間、下りで5時間前後かかると言われます。往復で13時間+山小屋での宿泊時間+移動時間を想定すると、ワークアウトをずっとオンにしていると少し心許ないですね。全行程をワークアウトで記録したい場合には、少なくとも宿泊時の充電は必須かと思います。

ただし、「低電力モード」を使用し、心拍数とGPSの測定頻度を減らしたワークアウト設定を有効にすれば、15時間のワークアウト測定を含めても最大60時間の使用が可能になるとされています。同機能が提供されれば、数値的に富士登山の往復も余裕ですね。

一応補足しておくと、通常モード(モバイル通信なし)でApple Watch Ultraを使用した場合、仕様上は36時間とされていますが、体感的に丸2日強は持ちました。通常のApple Watchだと大体1日半程度なので、スタミナはさすがというところです。

*  *  *

Ultra独自のデザインに関しては、アウトドアユースに特化したポイントが多くなっています。日常使いだと、人によっては使い勝手に影響することも出てくるかもしれないので、できれば実店舗で形状や装着感を確かめてから購入することをお勧めします。

筆者としては、ライフログやヘルスケアだけを目的に買うのであれば、やはり「Series 8」の方が向いていると思います。

Apple Watch Ultraの赤くなった文字盤

▲Apple Watch Ultra用の「ウェイファインダー」文字盤では、Digital Crownを回すことで夜間の視認に適した赤い表示に切り替えられる

Apple Watch Ultra

▲Apple Watch Ultraはアウトドアユースに全振りした製品として魅力。従来モデルのバッテリー持ちや氷点下での挙動などに不満があった人には、検討の価値は多いにあるだろう

一方、屋外ワークアウトのバッテリー持ちについては、Ultraにかなりメリットがあります。ハイキングで一度使ったら手放せなくなりそうです。

アウトドア向き製品といっても、本格的な登山やカジュアルダイビング、ハードなエンデュアランススポーツなどが唯一の対象というわけではありません。むしろ週末にちょっとしたアウトドアを楽しみたい人こそ、一度検討してみると面白い機種だと思いますよ。

>> Apple「Apple Watch Ultra」

 

<取材・文/井上 晃

井上 晃|スマートフォンやタブレットを軸に、最新ガジェットやITサービスについて取材。Webメディアや雑誌に、速報、レビュー、コラムなどを寄稿する。Twitter

 

 

 

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