■日常使いで気になったポイント
筐体デザインについては、気になる部分が3つありました。1つ目はディスプレイのエッジが結構鋭いこと。これは長袖を着たときにも、文字盤が隠れにくいというメリットを生む特徴ではあります。
一方、勢いよく腕を動かしたときに、人やモノにエッジがぶつかる可能性はやや心配です。他のApple Watchではディスプレイにエッジがないので、家族で川の字で寝るようなご家庭でも睡眠の測定などにも安心して使えるのですが、Apple Watch Ultraではちょっと躊躇します。
2つ目は、Digital Crown(デジタルクラウン)を回すときに、リューズの一部が肌に当たる場合があること。もちろん、装着位置や押す強さによっても変わるのですが、ふとした操作で肌にグリグリとリューズの溝が当たるのは、少々気になりました。
3つ目は、アクションボタンを間違って押してしまう場合があること。これは慣れの問題でもありますが、リューズやサイドボタンを押下したいときに、アクションボタンが反対側にあるので、間違って操作してしまうことがありました。
アクションボタンにはショートカット機能を割り当てられるのがメリットですが、誤動作のたびに機能を取り消すのは少々ストレスに感じました。コーナーを押さえるようにすればいいのですが、慣れるまで少しかかりそうです。
■バッテリー持ちについて
今回の検証期間では登山やダイビングを試せなかったので、1時間の「屋外ウォーキング」(常時表示オン、モバイル通信はなし)で、バッテリーが何パーセント減るのか検証してみました。
ワークアウト開始時に89%あったバッテリー残量は、1時間で81%まで減りました。つまり、GPSを有効にした屋外ワークアウト1時間で8%のバッテリーが減ったことになります。
もし、バッテリーの消費速度が一定だと仮定すると、バッテリー残量が100%の状態から12時間のワークアウトを実施すると4%まで減ることになります。Apple Watch Ultraでは、「GPSを使用した屋外ワークアウト」で最大12時間利用できるとされていますので、看板に偽りなしと判断して良さそうです。
1km12分くらいのペースで42.195km歩いた場合でも、8時間半弱なので、どれだけ遅くてもフルマラソンは余裕で記録できますね(ちなみに、Series 8だとGPSを使用した屋外ワークアウトで最大7時間しか持たないので、フルマラソンの距離を歩いた場合は、途中で電池が切れる可能性が高い)。
watchOS 9で追加された「バックトレース」(GPS情報を使ってユーザーが移動した経路を表示する機能)を有効にした状態でも、屋外ウォーキングを試してみましたが、こちらも約1時間で77%から69%へ変化。減り幅は8%で変わりませんでした。どうせ屋外ワークアウトを使うならば、バックトレース機能は気兼ねなく使えそうです。
とはいえ、例えば初心者が富士山に登る場合、登りで8時間、下りで5時間前後かかると言われます。往復で13時間+山小屋での宿泊時間+移動時間を想定すると、ワークアウトをずっとオンにしていると少し心許ないですね。全行程をワークアウトで記録したい場合には、少なくとも宿泊時の充電は必須かと思います。
ただし、「低電力モード」を使用し、心拍数とGPSの測定頻度を減らしたワークアウト設定を有効にすれば、15時間のワークアウト測定を含めても最大60時間の使用が可能になるとされています。同機能が提供されれば、数値的に富士登山の往復も余裕ですね。
一応補足しておくと、通常モード(モバイル通信なし)でApple Watch Ultraを使用した場合、仕様上は36時間とされていますが、体感的に丸2日強は持ちました。通常のApple Watchだと大体1日半程度なので、スタミナはさすがというところです。
* * *
Ultra独自のデザインに関しては、アウトドアユースに特化したポイントが多くなっています。日常使いだと、人によっては使い勝手に影響することも出てくるかもしれないので、できれば実店舗で形状や装着感を確かめてから購入することをお勧めします。
筆者としては、ライフログやヘルスケアだけを目的に買うのであれば、やはり「Series 8」の方が向いていると思います。
一方、屋外ワークアウトのバッテリー持ちについては、Ultraにかなりメリットがあります。ハイキングで一度使ったら手放せなくなりそうです。
アウトドア向き製品といっても、本格的な登山やカジュアルダイビング、ハードなエンデュアランススポーツなどが唯一の対象というわけではありません。むしろ週末にちょっとしたアウトドアを楽しみたい人こそ、一度検討してみると面白い機種だと思いますよ。
<取材・文/井上 晃>
井上 晃|スマートフォンやタブレットを軸に、最新ガジェットやITサービスについて取材。Webメディアや雑誌に、速報、レビュー、コラムなどを寄稿する。Twitter
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