実際にいがめんちの作り方を教えてもらおうと、弘前の飲食店を2軒訪ねた。
1軒目は、弘前の町中にある居酒屋「津軽 お日さまの味」。主に地元の素材を使って丁寧に料理が作られている。店名は、食物を育ててくれるお日様に感謝し、お日様のようにぽかぽかと温かい店にしたい、という想いを込めて名付けたそうだ。
ここのいがめんちはかなり凝った作り方で、いわゆる一般的な家庭料理とはひと味違う、プロの料理人の作る格上げされたいがめんちだった。材料にもこだわりがあり、イカはすり潰してペースト状にしたものと、プリッとした食感が残るようにたたいたものの2種類を混ぜて使っている。ペーストはモンゴウイカ、たたいたイカはスルメイカや真イカなど、季節で違うこともある。粉は小麦粉の他、片栗粉、パン粉も使う。玉ねぎ、ニンジン、ネギ、生姜、ニンニクなど野菜もたっぷり。それぞれの味わいや食感を生かして、切り方を工夫している。味付けには、友人のお母さんが作っているという手作り味噌や、店主自身で考案したオリジナルダレ「八方汁」(企業秘密)などを使う。
さっそく作り方を見せていただいた。
「うちで作るいがめんちは、実は手間のかかる料理。真面目に作ったら半日はかかるよ」と川村さん。刻んだ野菜は炒めて水分を抜き、甘みを出して風味を立たせる。味を見ながら、イカ、野菜、調味料等を混ぜ合わせる。固さを調整しつつ、粉も加える。タネはそのままだとかなり柔らかいので、一旦冷凍し、シャーベット状に解凍して、スプーンで俵形に整えて揚げる。フワフワの食感ながら、イカのコリコリ感もあり、味噌や生姜の風味が程よく効いていて、何も付けないで食べても充分に美味しい。
川村さんも地元出身で、やはり子どもの頃から自分の母親が作ってくれたいがめんちを食べていたという。それはハンバーグのように焼くタイプだった。また、北海道で働いていたとき、まかない料理で似たようなものを作って食べていたそうだ。そこではイカのハンバーグと呼ばれていて、ホタテも入っていたとか。川村さんは、そのときのレシピをベースにして、自分で一番美味しいと思うオリジナルを考案した。
店には地酒もいろんな種類があり、津軽の郷土料理や創作料理などが食べられる。メニューにはユーモアが随所に効いていて、アットホームな雰囲気がある。今度来る時は、地酒でいがめんちを合わせてみたいと思った。