■自分の手でオーバーホールした初期型
1985年に発売された初期型(1KT)を7年ほど前に購入したというオーナーの“NABECKパパ”さん。フレーム番号が8000番台ということで、かなり初期に作られた個体と思われます(信じ難いかもしれませんが、この年、TZRは2万6000台も販売されていました)。年式相応にヤレていたエンジンは自分の手でオーバーホール。息子さんが同じ型のTZRでレースを楽しんでいることもあり、パーツなどはストックがあったとのことです。
発売当時から評価の高かったSSイシイ製のチャンバーも、そんなパーツのひとつ。あとはバックステップが付いている程度で外装はノーマル然としていますが、実はリプロ品のデカールを貼っていたり、自身の手でカウルを補修していたりと、このルックスを維持するために結構苦労しているとのこと。
2ストエンジンの生命線とも言える2ストオイルは、最近はAmazonでも販売しているトーハツ製を使っているとか。船外機などを作っているメーカーですが、過去にはバイクのエンジンを手掛けていたこともあり、息子さんもレースで使っているが評価は高いといいます。
■憧れのメッツカラー後方排気を入手
当時を知る世代なら、雑誌の裏表紙によく広告が載っていたキリン「メッツ」カラーのTZRに憧れを抱いていた人も少なくないでしょう。車体が当たる懸賞でしたが、実物を目にした人はほとんどいないので、実際に当選した人がいるのか疑問の声もありましたが、幸運にもその車体を譲り受けたのが現オーナーの須崎さん。前オーナーが転倒して手放したいとのことで声を掛けられたといいます。
傷が入っていた外装はショップにペイントを頼んで復元。貴重な個体だけに、アンダーカウルのYECステッカーの部分はマスキングで保護して塗り直すという手間を掛けています。「アッパーカウルはノーマルよりキレイなくらいだと思います」と須崎さんも胸を張ります。
後方排気なのでテールカウルに隠れていますが、チャンバーはTZRオーナーズクラブの人に作ってもらったというオリジナル。キャブレターは2ストには珍しいFCRを装着しています。ノーマルでは正立式だったフロントフォークは倒立に。ホイールはアドバンテージの「EXACT」をおごるなど、貴重なマシンにふさわしい仕上がりになっています。
■伝説のマシンを手に入れた若きオーナー
こちらも、3MAという型式から「サンマ」と呼ばれることもある後方排気のマシン。しかも、ただのTZRではなくチャンバー製作で有名なYUZO MRDによるコンプリートマシン「YSSM」です。オーナーの宮田さんは、まだ26歳ながら3MAとNSRを乗り継いでこれが3台目の2ストレプリカなのだとか。「NSRは低速トルクがあって乗りやすいのですが、もう少し刺激がほしいなと思っていたところに、このマシンに出会ったんです」と語ります。
フロントホイールがノーマルの17インチから、16インチへと小径化され、タイヤも細いバイアスになっているのが最大の特徴。現行のフロント重視のマシン作りとは正反対の方向性ですが、そんなマシンに20代の若者が乗っているのがユニークです。実際の乗り味は「すごい勢いでマシンが寝るので怖いくらい。フロントを使わずリアで曲がれと言われているよう」とのこと。ただ、その分乗りこなす楽しみがあるといいます。
チャンバーはもちろんYUZO MRD製。外装のペイントも、このコンプリート車を手掛けていたショップに頼んで塗り直してもらったとのこと。貴重なマシンが若きオーナーの手で蘇る姿には大きな希望を感じます。
■現代の若者も2ストの速さには魅せられる!?
2ストロークのレーサーレプリカが大きなブームとなった要因には、車検のない250ccでも大排気量に負けない走りを実現していたことがありますが、その魅力は現在になっても色あせていないようです。
2年前、20歳のときにこの3MAを購入したという中島さんは、そのきっかけを「大型乗りの友人がいて、それと一緒に走れるマシンということで、2ストのレプリカを探し始めました」と語ります。
子どもの頃からモトクロスを楽しみ、2ストマシンの速さを知っていたとのことですが、それにしても後方排気のTZRを選ぶところがかなりマニアックです。「ヤフオクを見ていたら、出品者がたまたま近所の車屋さんだったので、直接見に行って決めました。父もバイク乗りだったので『変なの買ってきたな』とかいいながらニヤニヤしてたので、喜んでたんだと思います」(中島さん)。
このマシンは倒立フォークが採用された後期型(1990年発売)ですが、そのフロントフォークは、サスペンション整備で有名なテクニクスでメッキやカシマコートなどを施すフルオプションでオーバーホールしているとのこと。ほかにもNSRをレストアしているなど、かなり2ストレプリカの沼にハマっているようです。