憧れの“メッツカラー”後方排気も!レプリカ世代垂涎のTZRが大集合!

■ライバルメーカーのスタイルに憧れてTZ風に仕上げる

同じく1990年式の後期型3MAですが、こちらなんとワンオーナー。カウルやアルミタンクなどはヤマハの市販レーシングマシン「TZ250」のものを移植しており、レーサー然としたスタイルに仕上がっています。フロントフォークや、ラジアルマウント化されたキャリパーなどもTZ用。ホイールもTZ用のマグネシウムホイールを装着しています。

エンジンの中身やカセット式のミッションも、できる限りTZのパーツを使用しているとのこと。メーターやラジエーターなど細かいパーツもTZのものが使われています。そこまでTZにこだわる理由について、オーナーの“チュー”さんは「実はライバルメーカーでレースをしていたんですが、そのときからTZのデザインがカッコいいなと思っていて、それを再現したかったんです」と語ります。

作業はほぼ自身で行っているとのことですが、異なる年式のTZパーツを用いている割に、違和感なくまとまっている点にセンスを感じます。2ストマシンを長く維持するコツについても聞いてみたところ、「こまめに乗ること。あと遠出をするときなどは、ガソリンに少しだけ2ストオイルを混合しています」とのこと。美しいマシンだけに、長く走り続けてほしいところです。

 

■V型エンジンの各種パーツの組み合わせで70PSを実現

かつて世界チャンピオンを獲得した原田哲也のレプリカカラーが鮮やかなマシンは、チャンピオン獲得と同じ1993年式の「TZR250RS」。1991年からV型2気筒化され、3XVという型式となりますが、その後も「SP」や「RS」「SPR」などさまざまなタイプが用意され、年式ごとにポートの形状や電装などが異なるなど進化を続けていました。

オーナーの“宗谷の蒼氷”さんは、twitterでもTZRの情報を発信しているちょっとした有名人。原田と同じ歳なこともあって、このカラーにこだわっているとか。カウルは中国製のものにカラーリングしているとのことですが、純正品よりも柔らかくて割れにくいとのことです。

エンジンはチャンバーやCDIなどがセットになった、RC SUGOのレース用キットを装着していますが、そのままでは全く走らないため、シリンダーやヘッド、ピストン、ポート形状などをキットに合わせてセットアップ。「SP」や「SPR」の部品を組み合わせたエンジンは、約70PSを発揮しているとか。まだまだ進化を続けているようです。

 

■最新技術でインジェクション化したマシン

一見すると普通の3XV(それでも今やレアですが)に見えますが、実はキャブレターが電子制御のインジェクションとなっているというスゴいマシン。手掛けたのは、旧い2ストマシンのインジェクション化で実績のあるYarouWorksです。

NSRやRGV-Γなどレプリカマシンのインジェクション化を手掛けているショップですが、3XVはキャブレターが前後シリンダーで分離しているため、苦労も多かったとのこと。しかし「学習機能があって走れば走るほど調子が良くなるのが魅力」とオーナーの“すこてぃっしゅ”さんは話します。

外観からはわかりにくいですが、茶こしのようなフィルターが付いているのがインジェクション本体。チャンバーはRC SUGOのものを装着しており、かなり乗りやすいとか。軽量・コンパクトな車体で旋回性の良いマシンは現行車にはなかなかないので、長く乗り続けるためにインジェクション化は効果的な方法と言えそうです。

 

■空冷化した1KTのエンジンを搭載した魔改造YSR

車体は原付の「YSR」ですが、初期型TZR(1KT)のエンジンを搭載しているのが“空冷YZ”さんのマシン。しかも、腰上のシリンダーやヘッドは「DT125」のパーツを使って空冷化されています。エンジンのストロークが同じで、掃気ポートの位置も共通のためクランクケース側は無加工で装着しているとのことです。

1KTはクランクケースリードバルブ式のため、その部分を塞いだり、単気筒エンジンのシリンダーをふたつ並べて装着するために空冷フィンをカットしたりはしているようですが、驚くほど違和感なくまとまっています。エンジンが大きくなっているのに合わせて、フロントフォークは「TZR50」と「TDR50」のパーツを組みわせてセットしているとか。魔改造と呼ぶにふさわしいマシンですが、会場まで自走で来ても違和感はあまり感じなかったとのことです。

*  *  *

最終型でも発売から20年以上が経過しているTZRですが、オーナーは各々にカスタムやメンテナンスを行いながら、バイクライフを楽しんでいる様子。純正パーツが出なくなるなどネガティブな要素もありますが、現行車にはない魅力を持っていることは間違いありません。若いオーナーが惹き付けられていることからも、そのことが伝わってきます。もう二度と市販されることはないであろう貴重なマシンだけに、長く元気に走り続けてほしいものです。

 

<取材・文/増谷茂樹

増谷茂樹|編集プロダクションやモノ系雑誌の編集部などを経て、フリーランスのライターに。クルマ、バイク、自転車など、タイヤの付いている乗り物が好物。専門的な情報をできるだけ分かりやすく書くことを信条に、さまざまな雑誌やWebメディアに寄稿している。

 

 

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