■ハイパワーを効率的に使える全輪駆動
最新のRと、21年1月に日本発売された最新のGTIは、1984cc4気筒インタークラー付きターボエンジンを共用しています。
RとGTIとでは、マネージメントシステムが異なり、Rが最高出力は235kWであるのに対して、GTIは180kW、370Nmにとどまります。
最大の違いは、GTIは前輪駆動にこだわるのに対して、Rはハイパワーをより効率的に使うために全輪駆動であること。
さらなる違いは、とGTIに乗ったほぼ1年前の記憶をたぐりよせると…Rの全能ぶりが際立ちました。
■驚くべき高速でのフラットライド感
先代よりパワーアップした新型R(先代は228kWと、400Nm)をドライブしたのは、箱根周辺です。
全能と書いたのは、パワー感やハンドリングのよさもさることながら、乗り心地のよさも同時に際立っていたからです。
スポーツカーのような加速感と、やはりへたなスポーツカーよりすぐれた操縦性は、ゴルフRの面目躍如たるものを感じさせます。
操縦性については、「Rパフォーマンストルクベクタリング」なる機構が組み込まれた、フルタイム4WDシステム「4モーション」も寄与していそうです。
より速いコーナリングを実現するためのシステムで、端的にいうと、カーブを曲がっていくときの車体の姿勢を、より直進に近づけるためのもの。
ステアリングホールの操舵角や、アクセルペダルの踏み込み量などがパラメター。2つの多板クラッチを使って、外輪後輪へのトルク配分を多くします。
外側の車輪の駆動力が強くなれば、車体が旋回中に重量によって外側に押しだされていく影響を小さく抑えることができるようになります。
外側に車体が押しだされると、物理の法則で、前に進む力が弱くなってしまいます。車体の姿勢をなるべく直進に近づけることで、トルクを前に進むために効率よく使えます。
そのため、電子制御式ディファレンシャルロック「XDS」と、アダプティブシャシーコントロール「DCC」(こちらはオプション)を組み合わせ、統合制御します。
「車両のロールを抑え、わずかなステアリング(ホイール)操作に対してもより速く反応し、高速度域でのヨーおよび荷重変化の減衰を最適化することでドライビングダイナミクス」が向上するとフォルクスワーゲン。
ゴルフRには、「レース」というドライブモードもそなわっていて、これは、かなり楽しめるモードです。
上記の姿勢制御システムとともに、足まわりも操舵感もよりしゃきっと変化。走りを思いっきり楽しませるゴルフRの真骨頂が味わえます。
同時に、乗り心地のよさにもビックリです。高速でのフラットライド感もさることながら、荒れた路面でも凹凸をきれいに吸収してくれます。
硬めといえば硬めの設定の足まわりですが、不快さはいっさいなし。こんなふうにダンパーとスプリングを設定するなんて、すごい技術力だなあと、私はつよく感心してしまいました。
価格は639万8000円(同時発売のバリアントは652万5000円)。安い価格ではないけれど、クルマ好き、ドライブ好きが乗ったら満足いくこと請け合いです。
【Specifications】
☆フォルクスワーゲン ゴルフR
全長×全幅×全高 4295x1790x1460mm
ホイールベース 2620mm
車重 1540kg
1984cc直列4気筒ターボ 全輪駆動
最高出力 235kW@5350〜6500rpm
最大トルク 420Nm@2100〜5350rpm
8段ツインクラッチ変速機
燃費 12.3km/l(WLTC)
価格 639万8000円
<文・写真/小川フミオ>
オガワ・フミオ|自動車雑誌、グルメ誌、ライフスタイル誌の編集長を歴任。現在フリーランスのジャーナリストとして、自動車を中心にさまざまな分野の事柄について、幅広いメディアで執筆中
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