■パワーアップした1.8Lと力強い2.0L
今回もプリウスは、ハイブリッドとプラグインハイブリッドの2タイプを用意。乗れたのは、ハイブリッドのみです。
ただし、1.8リッターに加えて、あらたに設定される2リッター版も試すことができました。
1.8リッター車は現行モデルよりパワーアップ。「メインに開発しました」とトヨタ自動車の開発陣がいう2リッター車は、力強さで、さらにその上をいく感じです。
短い時間の試乗ですが、どちらのエンジンも前輪駆動と4WDが試乗用に用意されていたので、4モデルすべてを体験することができました。
1.8リッター車は、エンジンこそ現行モデルと同じ1797ccの「2ZR-FXE」ですが、電池の出力が10%上がるとともに、前輪駆動用モーターの出力はプラス30%。
フロントモーターは、出力が現行モデルの53kWから70kWに、トルクは163Nmから185Nmになります。
さらにE-Fourと呼ばれるトヨタのハイブリッドを知っている人にはお馴染みの4WDシステム搭載車の場合、後輪駆動用モーターの出力も上がっています。
現行モデルの5.3kWから新型では30kWに、トルクは55Nmから84Nmに上がります。
2リッター車は、レクサスUXと共用の1986cc「M20A-FXS」エンジンを搭載。UXのエンジンの最高出力は107kW、最大トルクは188Nm。プリウスでは、112kWと発表されています。
UX250hのハイブリッドシステム用モーターは、フロントが80kWで202Nm。リアが5kWで55Nmです。これは、1.8リッターと同様のシステムに置換されるのではないでしょうか。
今回プロトタイプを走らせたコースは、中速コーナーときつめの低速コーナーが組み合わせれていて、さらに上りと下りがあるという、短いけれど凝った設計です。
そこで走らせたプリウスは、ひと言で印象をいうと、現行モデルより確かにパワフルになっていました。
特にE-Fourモデルでは、リアからモーターが押しだしてくる感じで、コーナーの立ち上がりなど、力強い加速を味わえます。
2リッター車、E-Four搭載車は特に「走りを楽しめるキャラクターを意識しました」と、開発を指揮した大矢賢樹(さとき)主査は教えてくれました。
操舵感もよく、カーブを抜けていくときの車体のロールも抑えぎみ。タイヤもグリップがしっかり。印象深いドライブ感覚です。
「長く愛されるクルマになってほしい」という大矢主査の言葉が、サーキットで走らせているとき、頭に浮かびました。
あとは、エンジンのサウンドの問題でしょうか。比較的高い回転域では、気持いい音とはいえません。ここだけは現行モデルとあまり変わっていないのが残念です。
■大きく変わったフロントマスク、ルーフのピーク位置も変更
新型プリウスは、スタイリングもけっこう大きくイメージチェンジ。
ハンマーヘッド(シュモクザメ?)とトヨタが呼ぶ、上下幅の薄いLEDヘッドランプと小さなグリルで構成されたフロントマスクと、面の表情で抑揚をつけた車体が特徴的です。
デザイナーは、ルーフのピークを前席乗員の頭部の背後におく、なんていうか、おにぎり型のシルエットは卒業したかったようです。
今回はルーフのピークをずっと後方にズラしています。ネガは空力がすこし悪化することとか。
そこでシャシー設計チームは、全高を現行モデルの1470mmから1430mmに下げました(それにともない乗員の着座位置も30mm低くなっています)。
「全高を低くしたことで、空力に影響する前面投影面積を表すCdA値は、現行モデルと同等にできました」。大矢主査は説明してくれました。
プリウスが新型になっても使い続けられるTHS-Ⅱというトヨタ独自のシリーズパラレル式ハイブリッドシステム。
トヨタ自身、新しいクラウンクロスオーバーRSアドバンストやレクサスRX500hなどで、従来のTHS-Ⅱから卒業をはかっている昨今。
かつ、ピュア電気自動車が市場に増えてきているなか、グローバル市場を見たとき、どれだけの将来性を見込んでいるのでしょうか。
「プリウスで大事なのは、手の届きやすいハイブリッド車であることです。なので(PHVが出てきても)プリウスの存在意義はあります」
大矢主査はそう語ります。
従来のシステムでやれるところまでやる。そんな意気込みでもって送り出される(近未来形)のが、今回の第5世代のプリウスハイブリッドなのでしょう。
>> トヨタ プリウス
<文/小川フミオ>
オガワ・フミオ|自動車雑誌、グルメ誌、ライフスタイル誌の編集長を歴任。現在フリーランスのジャーナリストとして、自動車を中心にさまざまな分野の事柄について、幅広いメディアで執筆中
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