■道を選ばない自由なツーリングが楽しめる「トゥアレグ 660」
アプリリアが2022年に投入した「トゥアレグ 660」。長距離ツーリングに対応したアドベンチャー系と呼ばれるマシンで、特にオフロードでの走破性に力を入れた作りになっています。
国産車でいえばヤマハの「テネレ700」に代表されるように、近年のミドルクラスのアドベンチャーマシンではトレンドとなっている方向性です。
アドベンチャーマシンのアイコンとなる高速巡航で効果を発揮する大型のスクリーンですが、「トゥアレグ 660」を見ると、このスクリーンの透明な部分が広いことに気付きます。
これは、オフロードを走る際に路面の確認がしやすいようにとの配慮。このマシンが荒れた未舗装路をターゲットにしていることが感じられます。
ホイール径もフロントが21インチ、リアが18インチとオフロードマシンと同じサイズを採用。タイヤも大きめのブロックタイプで、未舗装路に対応しています。
エンジンは660ccの並列2気筒で80PSを発揮。この排気量としては十分なパワーを確保していますが、特筆すべきは270度クランクを採用し、オフロードでのトラクション性能を高めている点です。
低回転から路面をしっかり掴んで駆動力を伝えられるので、荒れた路面はもちろん、舗装路でも安心感が高く気持ちのいいエンジンです。
オフロードに注力したマシンらしく、ストロークの長いサスペンションを装備しているため、シート高は860mmと高めですが、実際に跨ってみると細身の車体のため数値以上に足付き性は良好。
ライディングポジションは上体が起きてリラックスできるもので、長距離ツーリングでも疲れが少なそう。どこまでも走って行けそうな気分になります。
試乗は舗装路で行いましたが、路面はちょっと濡れていて、グリップは心もとない状況。ただ、タイヤの接地感が明確に伝わってくるので安心して走れました。
また細身の車体は左右の倒し込みも軽く、204kgというスペック以上に軽量に感じます。重心位置が低いようでオフロードマシンにありがちな腰高感がない点も好印象でした。
電子制御も充実しており、オフロードにも対応したライディングモードやトラクションコントロール機構も搭載。車体の安定感が高いため、キャンプ道具などを積み込んでのツーリングでも安心できそうです。
サハラ砂漠の住人であるトゥアレグ族からとった車名の通り、どんな道でも自由な移動ができるのがポイント。オフロードを抜けて山の中でコーヒーを楽しんだり、キャンプツーリングなどを楽しむには好適なマシンと言えそうです。
■アップハンドルでアグレッシブな走りが楽しめる「トゥオーノ660」
ツーリングを楽しみたいが、オフロードを走る予定はないという人におすすめしたいのが同じ2気筒エンジンを搭載した「トゥオーノ660」。
パッと見はフルカウルをまとったスポーツマシンですが、アップライトな乗車姿勢を実現するアップタイプのハンドルを装着しているのが特徴です。
街中でも扱いやすく、長距離ツーリングでも疲れにくいライディングポジションなので、筆者のような中年ライダーにもやさしい作りだと言えます。
エンジンは前述の「トゥアレグ 660」と同じ660ccの並列2気筒ですが、こちらは最高出力が95PSとなっており、よりアグレッシブな走りが楽しめます。
車体のベースとなっているのは、同社ミドルクラスのスポーツマシン「RS660」で、運動性能の高さは折り紙付き。183kgというクラストップレベルの軽量な車体も、スポーツライディングを楽しむ上では大きなメリットです。
実際にハンドルを握ると、パイプ形状のハンドルは思った以上に幅が広く、コンパクトな車体をしっかりと抑え込めます。
そして、走り出して感じるのはアクセルが非常に開けやすいということ。上体が起きていて、視界が良好なこともありますが、270度クランクによってトラクション性能が優れたエンジン特性、それによく調律された電子制御スロットルが効いている印象。低回転からスムーズな加速が楽しめます。
2気筒エンジンによって幅が狭く、タンク長も短く抑えられているため、車体は見た目以上にコンパクト。
かつての400ccクラスのスポーツマシンより小さく感じるほどです。それでいて、エンジンはパワフルなので、走りが楽しくないわけがありません。
電子制御の調律も絶妙で、トラクションコントロールやウィリーコントロール、クルーズコントロールなど充実の装備ですが、マシンに乗らされている感覚はなく、ライダーとマシンの一体感が高い! ツーリング先でワインディングを楽しみたいライダーにぜひ乗ってほしい完成度です。
>> アプリリア
<取材・文/増谷茂樹>
増谷茂樹|編集プロダクションやモノ系雑誌の編集部などを経て、フリーランスのライターに。クルマ、バイク、自転車など、タイヤの付いている乗り物が好物。専門的な情報をできるだけ分かりやすく書くことを信条に、さまざまな雑誌やWebメディアに寄稿している。
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