マツダの常務執行役員で、デザイン部門を統括する前田育男さん(写真左)によると、マツダがフレグランスを手掛けるきっかけとなったのは、マツダのクルマづくりに対する思想が関係しているとのこと。
「マツダはクルマづくりにおいて、視覚や聴覚などの感覚的な部分にこだわっていますが、これまでは“嗅覚”が抜けていました。なので香りにおいても、マツダを身近に感じられるものを表現したかったのです」と前田さん。
また、マツダが資生堂をパートナーに選んだのは「企業の規模で選んだのではなく、東京・銀座に本店を構える老舗の歴史と、伝統にとらわれないチャレンジ精神と本物志向、そしてモダンなところに共感して」との説明でした。
実際のフレグランスづくりは、まず資生堂のおふたりの担当者が広島のマツダ本社を訪問。テストコースをマツダ車で走ったり、クレイモデルを製作したりして、マツダの“熱さ”を感じとったのだとか。
そこからは、144年の歴史を持つ資生堂のお仕事。5名の開発メンバーで、目で見えない香りについてどう表現するか、検討を繰り返したといいます。
肝心の香りに関して、マツダ側は「クルマはアート」という同社のスローガンに合わせ“メタリックだけど心地よい金属的な香り”をリクエスト。それを受けた資生堂サイドでは、魂動デザインの持つ“強さ”をウッディノート(木)で、“情熱”をローズで、“生命観”をレザーノート(なめし皮)で表現し、シンプルな“日本の美”を追求したといいます。
資生堂は、こうして生まれた3つの香りをマツダへ提案しましたが、どこかで嗅いだことのある心地よい香りのものは、却下され、最終的に「SOUL of MOTION」の香りが誕生したということです。
また「SOUL of MOTION」は、ボトルにもこだわっています。フレグランスの液体が収められているガラスのビンを、ステンレスの容器が覆うスタイル。形はやや楕円の柱型。しっかりとした重量感がありつつ、しかし、手で持ちやすいようにややシェイプされています。
置いた時や持ち歩く時などは、ビンは容器に覆われたままですが、容器を持ち上げるとビンの下の部分だけが見える形となり、ボトルに刻まれた“Soul of Motion”のロゴが現れます。でも、そのまま持ち上げてもボトルと容器は外れません。さらにワンプッシュ押してビンを取り出す仕組みになっています。
そもそも香りの文化は、日本と欧米諸国とでは違います。海外では香りをつける文化。そのため、強い香りが好まれ、アルファロメオなどはシートの下に“香りの袋”をしのばせるといった“香りによる演出”も行っています。
しかし日本は、なるべく無臭で、むしろ香りを取り除く文化。あるいは永遠のテッパン=石鹸の香りのような、ほのかな香りが好まれます。以前、日産自動車もモーターショーの際、ブースで香りによる演出を行っていましたが、緑茶をベースにした和テイストの香りでした。
それを考えると「Soul of Motion」の“あえて金属的な香り”は、かなりの挑戦だといえます。ちなみに香りは、つけた時は男性的な強い印象。でも、時間が経つとまろやかになるなど、どんどん香りが変化していきます。なので、大人の男性へのプレゼントにいいかも。
“いつもマツダを身近に感じて欲しい”ということで作られたフレグランス「Soul of Motion」。残念ながら、今のところ発売予定はありませんが、マツダの世界観を香りで感じられるものでした。
(文/吉田由美)
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