さて、新型Eクラスは、フロントに3つ、リアにふたつのレーダーを備え、ステレオカメラで前方を監視します。こうしたハードウェアは、いまや目新しいものではなくなりましたが、ソフトウェアの追加・改良で、それらの使われ方がどんどん洗練されていくのです。
新しいEクラスは、周囲を見回してドライブパイロットを実行し、時に、車線から外れそうなこと、死角に他車がいることなどを警告し、場合によっては、クルマや歩行者にブツかることを防ぐ、または被害を減少させるために自動ブレーキをかけます。さらにニューモデルでは、ステアリング操作までアシストし、衝突を回避する機能も追加されました。
ステレオカメラは、照明システムとも連動しています。“マルチビームLEDヘッドライト”はその名のとおり、片側84個のLEDが3段に並べられた先進デバイスで、前方の風景をデジタル化した情報をカメラから得て(1秒間に約100回更新されます)、必要な場所を的確に照射し続けます。ヘッドランプをハイビームにしたままでも、前走車を眩惑する光を発するLED群はオフにして、一方、他車の周囲やカーブの先は、オンのままのLEDで明るく照らしてくれるのです。
さまざまな新技術を採用したEクラスですが、ステアリングホイールを握って走ってみると、総じて“順当な仕上がり”といったところ(上から目線でスイマセン)。例によって、職業的なアラ探しをすると「いまひとつ洗練されないエンジン音がけっこう室内に入ってくる」、「標準設定である『コンフォート』モードでの出足/加速に、もう少しパンチが欲しい」、「乗り心地がやや骨っぽい」といったコメントが頭の中に浮上してきますが、いずれも「メルセデスの新型Eクラスなのだから」という過剰な期待から生じたもの。妙なバイアスを除いて見直せば「プレミアムセダンらしい落ち着いた走り」という評価になりましょう。
メルセデス・ベンツのニューモデルは、市場に投入された後も改良が重ねられ、どんどん良くなっていくことが知られています。新しいEクラスも、これからバリエーションが増え、メルセデスの基幹モデルとして熟成していくに違いありません。並行して、ハードウェアを司るソフトウェアもバージョンアップを重ねるはず。一抹の不安を感じないではありませんが、大いに期待して、今後を見守りたいと思います。
<SPECIFICATIONS>
☆E200 アバンギャルド スポーツ
ボディサイズ:L4950×W1850×H1455mm
車重:1700kg
駆動方式:FR
エンジン:1991cc 直列4気筒 DOHC 直噴ターボ
トランスミッション:9AT
最高出力:184馬力/5500回転
最大トルク:30.6kg-m/1200〜4000回転
価格:727万円
(文&写真/ダン・アオキ)
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