■シャープな加速と路面に張り付くようなカーブ性能
はたして、開発陣の思惑どおりの出来映え、と、ショートサーキット(発売前なので公道試乗は不可)を走った私は、いたく感心。
加速感は、従来の1.8リッターのPHEVモデルでもけっして悪くないのですが、よりシャープ。さらに大きくちがうなと思ったのは、カーブを曲がるとき。
路面に張り付くように走る感覚が、新しいプリウス PHEVならではです。加速と減速とカーブを曲がる動きなどが、一体感として体感できました。
今回のプリウスは、空力の観点から車体のシェイプを決めるやりかたから離れています。
「デザイナーにカッコいいと思うスタイリングを描いてもらい、それを重視して開発しました」。開発を指揮した、トヨタ自動車の上田泰史チーフエンジニアは言います。
そのあと、従来より悪化した空力性能を”取り戻す”ため、前面投影面積を徹底的に抑えたそうです。タイヤサイズを195と細めにしたのも、CdA値を低くするためと説明されました。
195/50R19インチという、細くて大径の、ユニークなディメンションの専用タイヤです。
従来モデルは15インチあるいは17インチだったので、スタイリング上も見栄えがよくなったし、走りで不満は感じられませんでした。
■シートに除電性能を持たせ空力を整える着想
ユニークなのは、「除電スタビライジングプラスシート」の採用。車体まわりの風の流れをきれいに整えるための技術です。
トヨタ自動車のエンジニアは、各所の帯電が、ステアリングやボディの空力に影響を及ぼすことに、ずっと注目してきています。
今回はドライバーズシート座面一部に除電性能を持たせることで、車体の外部を流れていく空気が乱流を起こすことを防ぐのに成功したと説明されました。
これ、たいへんおもしろい着想です。以前、トヨタのエンジニアが除電のためのデバイスをボディ数個所に採用していることをドイツのメーカーのエンジニアに話したら、一笑に付されました。
ところが、除電をするのとしないのとで実験してみると、あきらかに走りが変わります。
こんなところにも、きちんと手が入っている。プリウスは代が変わっても、クルマ好きに愛されるクルマにしたい、と開発者の思いのゆえんでしょう。
>> トヨタ プリウス
<文/小川フミオ>
オガワ・フミオ|自動車雑誌、グルメ誌、ライフスタイル誌の編集長を歴任。現在フリーランスのジャーナリストとして、自動車を中心にさまざまな分野の事柄について、幅広いメディアで執筆中
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