■イヤースピーカーという独自形状
まずは、ソニー「Float Run」を。左右がつながっているワイヤレスイヤホンタイプで、耳の間近にイヤースピーカーが浮くような形で取り付けられています。
重量33gは特別重くはありませんが、スポーツ志向の設計で、耳に固定する形状。フックで固定する耳の周囲との接触や、首周りに伸びる左右を繋ぐケーブル部はどうしても意識してしまいます。なお、IPX4相当の防滴性能という点はスポーツ志向ならでは。
ではここで、“ながら聴き”のライバル製品の装着感も見ていきましょう。
装着して比べてみると、ソニー「Float Run」は、“ながら聴き”系の中では大柄でしっかり固定する部類と言えます。
次に、ソニー「Float Run」の“ながら聴き”具合も体験していきます。まず室内。当然ながら音楽を流さない状態での外音の聞こえ具合は完璧。
あとは音楽を流しつつ周囲の音を聞こえるかどうかですが、音楽と周囲の音が自然にミックスされて聞こえます。iPhoneの音量1/3程度までなら自然に周囲の音を取り込むくらい。インターホンの音が聞こえればいい程度なら、iPhoneの音量半分くらいまで上げられそうです。
この“ながら聴き”スタイルが活躍するのが、長時間のオンライン会議というシーン。やや装着している感はありますが、耳を塞ぐ密閉感はナシ。
これなら来客や宅配便が来てもすぐに対応できます。連続再生・通話時間とも10時間というスペックで、10分の充電で60分使える急速充電機能も搭載している点も優秀です。
屋外にも持ち出してみました。
当たり前のことですが、電車内、そして街中では周囲の音が聞こえて、音楽もその上で同時に流れるイメージ。音量が小さいと騒音負けするので特に低音の再現は苦手ですが、まず周囲の音が聞ける安心感があるし、自分だけBGMが流れていると考えると悪くはありません。なお音漏れは予想以上に小さいのですが、周囲の環境音に合わせて調整したいところです。
気になる音質ですが、サウンドとしては、ナチュラルで特に中高域の厚みとクリアさがポイント。と言っても、あくまで同タイプの製品で優秀というくらいで、実勢価格1万9800円に近い一般的なイヤホンと比べられる音質ではありません。
それよりも気になるのが、”ながら聴き”ライバル製品との音質比較です。
価格面で近い骨伝導イヤホンのShokz「OpenRun」は、音の臨場感こそあるが、中低域の情報量がやや弱めです。価格面では上のShokz「OpenRun Pro」は、特に低音の再現性と臨場感が得意。ただ骨伝導では中高域のクリアさが伸びにくいので、ここは好み次第といったところでしょうか。
そんななかで、強力なライバルが「Oladanceウェアラブルステレオ」の存在です。ソニー「Float Run」と同じくイヤースピーカー型の製品ですが、「Oladance」の方は異次元なほどの重低音が響いて、中高域のクリアさ、臨場感もなかなか。音質面では「Float Run」の完敗と言わざるをえません。
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2月3日に発売したばかりのソニー「Float Run」。骨伝導ではないイヤースピーカー型、そして中高域のクリアさ志向の音質は魅力もあります。ただ、ライバルも強力で、装着感ではShokz「OpenRun」「OpenRun Pro」が扱いやすいし、音質面では「Oladanceウェアラブルステレオ」が突き抜けて優秀です。
ライバルとの比較は厳しい結果になりました。「Float Run」の売れ行きは今後の価格の値下がり次第だなと思うのも事実。とはいえ、“ながら聴き”という製品カテゴリに「Float Run」が登場したことで、市場が活性化していくことは間違いなさそうです。
<取材・文/折原一也>
折原一也|1979年生まれ。PC系出版社の編集職を経て、オーディオ・ビジュアルライター/AV評論家として専門誌、Web、雑誌などで取材・執筆。国内、海外イベント取材によるトレンド解説はもちろん、実機取材による高画質・高音質の評価も行う。2009年によりオーディオビジュアルアワード「VGP」審査員/ライフスタイル分科会副座長。YouTube
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