■ベルギー・アントワープでの試乗会
実際の走りは、バッテリーを使った電気自動車と同じ。試乗会の開催されたベルギー・アントワープで乗ったiX5は、力強い加速を味わわせてくれました。
実はBMWは、トヨタ自動車と包括的な技術提携を結んでいて、燃料電池の分野ではMIRAIで先んじているトヨタから、燃料電池の技術の提供を受けています。
ただし、BMWは「あくまでもBMW車を作ることにこだわります」(プロジェクトを統括するユルゲン・グルドナー氏)といい、パワー感も、操縦性も、従来のBMW車どおりという感じ。
そもそも、今回はまだ水素自動車のプロジェクトの序の口らしくて、実際に販売されるときは、X5の形態でない可能性のほうが高いようです。
ただ、アントワープでは、おなじみのX5の運転席に座れて、内燃機関搭載モデルとほとんど変わらない操作を体験できて、どこが新しいの? と思ったほどです。
■内燃機関搭載モデルと変わらない「ナチュラルな仕上がり」のすごさ
ハンドリングはクイックで、車体の動きは、ドライブしている私の意のまま。アクセルペダルを軽く踏み込むとすかさず加速し、ブレーキは強力。BMWの良さが味わえるモデルです。
どこが新しいの? どこがすごいの? 私がこう思ってしまったことが、実はすごいのです。つまりナチュラルな感覚で仕上げられています。
iX5は504kmの巡航距離を誇る一方、時速180kmでずっと走れて、その気になれば静止から時速100kmまでを6秒で加速できます。スペック的にはたいしたものです。
一方、なにも知らないで乗れば、スムーズな加速と、しなやかに動くサスペンションシステムと、高い静粛性などで、実に快適なクルマだなあ、で感想は終了、となりそう。
■水素で走るEVの必要性
なぜ、電気自動車に、バッテリーEVと、今回のような水素で走るEVが必要なのでしょうか。
BMWのエンジニアは、いくつかの利点を指摘します。ひとつは、BEVが増えていくと、ある時点で充電インフラへの投資が増大してしまうため、水素は効率のよい分散方法であること。
もうひとつは、水素の将来性です。運搬できるエネルギーであるため、豪州のように、水素をたくさん作れる土地からの輸入が可能なのです。
風力のような自然エネルギーや、褐炭を使っての電力で水素を作り、それを液化して特殊な運搬船で運ぶ。そんな流れが現実のものになりつつあります。
iX5は、プロトタイプ。今回、100台作られ、テストなどに供されるようです。
BMWの水素自動車が市販されるには、あと、6、7年かかるのでは、と前出のBMWのグルドナー氏はいいます。どんなスタイルで、どんな乗り味になるのか。楽しみです。
<文/小川フミオ>
オガワ・フミオ|自動車雑誌、グルメ誌、ライフスタイル誌の編集長を歴任。現在フリーランスのジャーナリストとして、自動車を中心にさまざまな分野の事柄について、幅広いメディアで執筆中
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