■録再対応カセットデッキ搭載がうれしい!
実物は…もうデザインから1980年代レトロ風。ただ実際の1980年代当時のラジカせってブラック基調のクールな機種がほとんど。ORION「SCR-B7」は1970年代風デザインを基本にブラック×ゴールドで演出を加えたネオヴィンテージ風。でも、今の若い人から見たら“昭和レトロ”のひと言で片付けられてしまいそうですね。
さてこのORION「SCR-B7」、語るべきは“ラジカせ”らしい仕様がてんこもりというところ。多機能な部分は写真で一気に紹介します!
“ラジカセ”の主役として語りたいのは、やはりカセットデッキ。カセット部は2ヘッドステレオカセットメカ採用。フルオートストップメカ機能搭載です。録再対応デッキになっていて、カセット以外の再生ソース(内蔵マイク、AUX IN、ラジオ、Bluetooth、USB/microSDなどのデジタル)からの録音にも対応しています。
そしてお待ちかねのカセットテープを再生!
上部のSTOP/EJECTボタンを押してデッキを開き、カセットテープをセットして閉じる。ガチャと音の鳴る再生ボタンを押せば音楽が流れ出しました。「あれ? 聴きたいところ、もっと先だったかな」と早送りボタンを押し、キュルキュル鳴る音に交じる音を聴きながら判断して…というこの一連の流れがもう“ラジカセ”的な体験! 今回はアナログでつないで録音スタートまでしちゃってと、もう時代が80年代に飛びまくりです。
さて、メルカリで入手したカセットテープには録音済みの音源もあったんですが、普段聴いている音源があるわけではありません。
でも、そこは心配なし。外部入力のAUX IN端子も搭載していて、自分で録音してオリジナルカセットを作成。音源はサブスクですが、僕が家庭内で使う私的録音の範疇です。
ではここで、音質もチェックしておきましょう。
サウンド面の設計は本体正面に12.5センチ+3センチのコーンツイーターを採用した2WAYステレオスピーカー構成で、7W+7Wの総合14Wデジタルアンプ搭載。音源のカセットの準備はしましたが、音質レビューに相応しいのは…AUX IN(外部入力)ですね。
サウンドとしては、80年代当時の“ラジカセ”と比較して考えると現代的な音質。低音はバス(低域)を最大まで上げればちょうどよく上がるし(BassBoost機能もありますが、昔のラジカセそのままで音がぼやけるので使いませんでした)、歌声のクリアさもトレブル(高域)で調整可能。適度にサイズのあるステレオスピーカーとして上手くできています。現代的な基準で欲を言えば中域の質感がもう少し欲しいけど、昔のラジカセもそこは弱かったなと。
それから現代的な利用シーンと考えると、スマホとのBluetooth接続もはずせません。同じ音源を聴いてみると、サウンドバランスは同じですが、ワイヤレスな分だけ順当に情報量が落ちるかな。と言っても必要十分に良い音で実用性アリだと思います。
そして、せっかくのORION「SCR-B7」、気になるのはカセットテープ再生の音質です。やっぱり“ラジカセ”ですからね。
まずカセット再生のレビューとして語るべきは、再生スタート直後にどうしてもノイズが載ってくること。また、現代的なデジタル音源と違ってカセットテープ的なアナログ感のある音です。でも、僕らはこの“カセットテープ再生”という体験を求めているであって、そこで音質云々を語るのは無粋です。
むしろ、せっかくカセットテープを再生できるのだから、それゆえの音質の変化を語る方が趣味の世界でしょ! とばかりに、SONY、AXIA、maxellのカセットテープで音質比較もしてみました。メルカリで入手したもので、いずれも1989年〜1995年ごろに販売されていたカセットテープです。
SONY製のカセットテープは、音質面としては優等生すぎるオールラウンダー。サウンドバランスはAUX INで聞いた音に近く、繊細でバランス良く、低音も意外としっかりカバーしています。
AXIA(富士フイルムの日本国内向けカセットテープのブランド名)はサウンドバランスとしては中域の厚みを出していて、特にボーカルの量感を出すタイプかなと。
今回唯一のハイポジテープであるmaxellは、期待通り高域の再現性に振り切ったバランス。シンバルなどの金属音の再現の良さはもちろん、ボーカルの帯域もシャープに立てるような、クリア志向の音質です。
※ORION「SCR-B7」はTypeI(ノーマル)テープのみ対応です。TypeII(ハイポジ)テープも再生できますが、記録された音より高域が強調された形で再生されます。
ORION「SCR-B7」とカセットテープの相性は、個人的な好みで言えば、SONY製のカセットテープがバランス重視の音作りで気に入りました。でも、カセットテープの個性に合わせてラジカセ側で低音と高域をつまみで調整する使い方が正解かも。
“ラジカセ”に触れる体験って、どこか時代を1980年代にタイムスリップした感覚。ラジオを聞くためにアンテナを伸ばしダイヤルで周波数を合わせて、カチャカチャ音を鳴らしながらテープをセットして、耳と手の感覚を頼りに再生位置を探して、ノブで音質調整をして…音楽を聞くまでにアナログの手触りを感じまくりなんですよ。
それに音質面でも2万1780円で購入できるBluetoothスピーカーとして十分アリ。スマホと接続する今どきのデジタルネイティブな使い方もできて、ラジオもカセットも再生録音できる“ラジカセ”って、今の時代にコスパのいいオーディオとして選んでもいいのではないでしょうか。
<取材・文/折原一也>
折原一也|1979年生まれ。PC系出版社の編集職を経て、オーディオ・ビジュアルライター/AV評論家として専門誌、Web、雑誌などで取材・執筆。国内、海外イベント取材によるトレンド解説はもちろん、実機取材による高画質・高音質の評価も行う。2009年によりオーディオビジュアルアワード「VGP」審査員/ライフスタイル分科会副座長。YouTube
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