■フロントミドシップ6.5リッターV型12気筒エンジンの乗り心地は「運転しやすい」
乗ってみて、まず驚かされたのが、運転しやすいこと。ピュアスポーツのフェラーリ296シリーズも運転しやすさが印象に残るモデルです。最新のフェラーリの製品コンセプトなんでしょうか。
プロサングエのエンジンは、6.5リッターV型12気筒。重量配分がスポーツモデル(プロサングエは4ドアスポーツとされています)には大事と、前車軸の後ろに搭載です。
フロントミドシップとはいえ、大きめのエンジンをフロント搭載ですから、カーブを曲がるときなど運動性能が影響を受けるんじゃないか。
私の心配は、杞憂でした。ものすごくとつけたくなるぐらい、気持ちよく、小さなカーブでもくいくいと曲がっていけるのです。
48Vの電気モーターとダンパーを組み合わせ、車両の姿勢を制御するアクティブサスペンションシステムの恩恵、とフェラーリのエンジニアは説明してくれます。
先述のとおり、車高が1.6mになんなんとしますが、操縦感覚は重心高が低く、きついカーブでも車体の傾きを抑え、ドライバーが見た方向にすっとノーズの向きを変えます。
カーブから脱出しようというとき、アクセルペダルを踏み込むと、エンジンはすかさず2033kgの車体を加速させます。
ドロミーティの山岳路では、積雪はなかったのが残念ですが、道はつづら折れで、きついカーブを短い直線路が結んでいます。直線路では路面を蹴るように加速します。速い速い。
やはり4WDに後輪操舵システムをそなえていたGTC4ルッソは、シャープなハンドリングを楽しませてくれるモデルでした。
プロサングエの後輪操舵は、左右輪が別々に動きます。はたして、もっとふところが深いというか、山岳路を飛ばしても不安感がまったくありません。
もちろんステアリングホイールを通じて路面の状況はしっかりわかります。スポーツカーだ、というフェラーリの主張にも納得できる気がします。
自動車専用道路では、駿足ぶりを味わえました。たちどころに速度が、やばい、と思わず口に出しそうになるぐらい、ロケットのように上がっていきます。
ドライブモードは、「アイス」と「ウェット」に加えて、「コンフォート」「スポーツ」、それにレース場などで使える「ESCオフ」と5つのモード。
4WDの制御とブレーキ制御とサスペンションの硬さとステアリングの操舵感が変わります。
コンフォートでは、ダンパーの硬さが「ソフト」「ミド」、スポーツではさらに「ハード」と3段階から選べます。
一般道ではコンフォートでミドが良さそうですが、スポーツでハードに設定しても、けっして不快な突き上げは感じませんでした。上手なセッティングです。
■フェラーリの新しい世界を味わわせてくれる
シートは、基本形状はバケットタイプで、体をホールドしてくれるサポートが各所に設けられています。リアシートも同様の形状です。
おかげで、山岳路でも体は安定しています。私が乗ったフルレザー張りのシートはややクッションが硬すぎるかなとも感じました(とくに後席)。
とはいえ、後席にゆったりと座って、高級オーディオブランド「ブルメスター」による21スピーカーの3Dサウンド(前から音がどんっと出るかんじで臨場感たっぷり)を楽しめるなんて。
プロサングエは、フェラーリの新しい世界を味わわせてくれるクルマです。あいにく、あまりに世界中の市場で引き合いが多く、よほどの幸運がないかぎ入手は困難とか。
【Specifications】
Ferrari Purosangue
全長×全幅×全高 4973x2028x1589mm
ホイールベース 3018mm
車重 2033kg
6496cc 65度V型12気筒 4WD
出力 533kW@7750rpm
トルク 716Nm@6250rpm
変速機 8段ツインクラッチ
価格 4760万円
>> フェラーリ プロサングエ
<文/小川フミオ>
オガワ・フミオ|自動車雑誌、グルメ誌、ライフスタイル誌の編集長を歴任。現在フリーランスのジャーナリストとして、自動車を中心にさまざまな分野の事柄について、幅広いメディアで執筆中
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