アフリカツインとは、ホンダの、いやニッポンを代表するエンデューロマシン。その起源は、1988年の「XRV650」といわれることが多いのですが、実は1983年の「XLV750R」まで遡らなければなりません。
このバイクは、当時の“パリ・ダカ”に参戦するために開発された攻めのバイク。V型エンジンは、各シリンダーに3つのバルブとふたつのスパークプラグが備わり、低重心を狙って、エンジン下部にオイルを溜めるオイルパンがないドライサンプ方式とし、角形断面のアルミフレームをエンジンオイルタンクとして利用していたのです。駆動はドライブシャフト式。ドライブシャフトのハウジングがサスペンションアームを兼ねていました。
いやもう、スペックからして変態…、いや、本当にホンダらいしバイクです。残念ながら、V型エンジンのリア側シリンダーを巧く冷却できず、実戦で実力を発揮するには至りませんでした。
そんなバイクの末裔として甦ったアフリカツインは、エンジンをV型ツインから直列2気筒に変更したものの、新たな“武器”を手に入れてきました(詳細は後述します)。
さて、喜び勇んで体験ライド。とりあえずまたがると、とってもシート位置が高い。身長が174cmのワタシだと、片足のつま先がなんとか着くくらい。実生活で自分の短足を実感することは、普段さほどありませんが、改めて痛感。
ただしこのシート。調整機構が備わっているんです。シートの固定位置がふたつあり、低い方で留めると、シート高が870mmから850mmにダウン。たった20mmですが、ぜんぜん違いますね。かなり楽。
さて、試乗したアフリカツインは、まさかのオートマ。このトランスミッションこそが、アフリカツインの新たな“武器”でした。しかも、ただのオートマではありません。DCTと呼ばれる“デュアルクラッチトランスミッション”。ふたつのクラッチとモーターを使って、自動的にシフトチェンジしてくれるのです。
駆動の伝達ロスがなく、変速に要する時間も一瞬。アクセルを開くと、回転をきれいにつなげながら、涼しげにシフトアップしていきます。例えば、3速で走っていると、すでに2速と4速のギヤがスタンバイしていて、シフトアップもダウンも瞬時に完了…。とてつもなく洗練されています。
何より、この並列2気筒エンジンは、回転の盛り上がりとともにビート感も盛り上がる。この醍醐味は、2気筒ならでは。もはや快感。パワーもトルクもあるけれど、レスポンスが素晴らしく、スロットルレバーを握る気持ちにダイレクトに応えてくれます。ホント最高!
今時のエンデューロマシンらしく、重量バランスもセンターに寄っていて、そのデカさからは想像できないほど軽やか。ライダーに従って素直に車体が反応します。しかも、DCTとは別に、MT仕様も用意されていて、そちらはDCT仕様より重量が10kg軽いので、さらに軽やかに動いてくれると思います。MT原理主義者を自認するワタシでさえ、このDCTは魅力的ゆえ、ちょっと悩ましいところではありますが。
残念ながら、オフロードを走ってみる機会はありませんでしたが(走る気もありませんでしたが)、アフリカツインは久々に、走っていて愉快で、気持ちを高揚させてくれて、移動の手段としても俊足ぶりを発揮してくれました!
最後に、このDCTは、先に紹介したニューミッドコンセプトシリーズ時代に洗練されたものとのこと。さすがホンダ、あの当時もいいモノ創ってたんですね!
<SPECIFICATIONS>
☆CRF1000L アフリカツイン DCTモデル
ボディサイズ:L2335×W930×H1475mm
車重:242kg
最低地上高:250mm
エンジン:998cc 水冷4ストローク 直列2気筒 OHC
トランスミッション:6速DCT
最高出力:92馬力/7500回転
最大トルク:9.7kg-m/6000回転
価格:149万400円
(文/ブンタ、写真/グラブ)
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