▼「グランドワゴニア・オーバーランド・コンセプト」
「グランドワゴニア・オーバーランド・コンセプト」は、クルマで寝泊まりして旅をする人に向けたモデル。
全長5.75mの車体に、3リッター直列6気筒ツインターボエンジンを搭載。500hp(米国式)の最高出力と、691Nmの最大トルクです。それに4WDシステムの組合せ。
このグランドワゴニアにルーフトップテントを載せて、車内からルーフのハッチを開けてアクセスできるようにしているなど、オーバーランダー(旅人)が喜びそうなデザインです。
毒虫などから身を守れるうえ、トレーラーより簡便と、米国でよく売れているルーフトップテント。ジープが選んだのは「RedTail Overland 」の「 Skyloft 」です。
カーボンファイバーによる軽量で高剛性がセリングポイント。ほぼ一瞬で、前後長6フィートのテントが展開。電灯はもちろん、エアコンもコネクティビティも装備されています。
「地図にもないような土地を快適に移動するという、ジープの可能性のひとつの極といえるモデルとして仕上げました」
開発を指揮したアレン氏は言います。今回のコンセプトは、キャニオンランズの岩場を走らなくてならないため、特製のタイヤを履いていました(市場では未発売)。
18インチホイールに35インチと超大径タイヤのおかげで、5.7mのSUVが、ラングラーと同じ道を走れます。このタイヤを収めるため、ホイールハウスは切り欠きを大きくしたとのこと。
▼「スクランブラー392コンセプト」
ラングラー・ルビコンには「392」なるモデルが設定されています。車名は、排気量を米国式にキュービックインチで表したもので、6.4リッターのV型8気筒搭載車です。
「ジープの熱心なファンはやっぱり大きな排気量エンジンが好きです」
ラングラーの開発を統括するピート・マイロ氏がそう説明してくれるように、コンセプトモデルにもちゃんと(?)392を載せた「ジープ・スクランブラー392コンセプト」が用意されました。
遊び感覚あふれたエクステリアの造型と、あざやかなグリーンのカラリングが、このクルマは遊びのため、という作り手の思いを具現化しているようです。
ドアのない、軽快感がセリングポイントと見受けましたが、どうせやるなら徹底的に、と車体は軽量で高剛性のカーボンファイバー製。ドアもない車体を載せています。
1981年に発表したジープ・スクランブラーCJ8のイメージを活かしたデザインだそうです。とはいえ、20インチのホイールに40インチ径のタイヤの組合せは、すごい。やりすぎ感たっぷり。
ドロドロドロ~って聞こえる独特のV8のサウンドと、ごく低回転域から大きなトルクが出て、回転数の上昇とともに、どんどん力を増していく加速感は、昔ながらのもの。
このクルマが量産されたら(されない感じ……)、ときどきキャニオンランズ国立公園での走行を楽しみたくなりました。
▼「マグニトー3.0コンセプト」
ジープは2024年にピュアEVを登場させるとしています(25年の説もあり)。それを楽しみに思わせてくれるのが、「マグニトー3.0コンセプト」です。
ベースは、ラングラー・ルビコン。そこに電気モーターとバッテリーを搭載しています(バッテリーについての詳細は不明)。
3.0とは第3世代の意。「1.0」が2021年に、「2.0」が22年に発表され、そのたびにスタイリングが洗練されるとともに、パワーが上がっています。
23年の「3.0」の最高出力は285hp、最大トルクは370Nm。ダッシュボード上のスイッチによって、650hpと1220Nmへと切り替えが可能というユニークなシステム採用です。
もちろん、7スロットグリルなど、ジープのイメージはしっかり持っていますが、印象はより精悍に。Bピラーの位置変更と、ドアをとっぱらったスタイルで躍動感も増しています。
私が驚いたのは、無音で、岩場をよじのぼってしまう性能ぶりです。「4×e」も電動モードをもっていて、大きなモーターのトルクを活かした踏破能力に感心しますが、その上をいく印象。
岩場のコースのために用意したタイヤと、長いサスペンションストロークのおかげで、乗員は大きく揺さぶられることなく、望んだコースをしっかりキープして走っていけるのにも感心しました。
もうひとつ、特筆しておくべきことは、6段マニュアルシフトをそなえていることです。今回は3速いれっぱなしで、電気なので、クラッチを切らなくてもエンストはありません。
「マニュアルシフトは加速していくときに使えます。運転の楽しさを味わっていただけますよ」(アレン氏)
電動化はジープにとって不幸なことでなく、あたらしい楽しさを見出せるもの。という主張すら感じられました。
<文/小川フミオ>
オガワ・フミオ|自動車雑誌、グルメ誌、ライフスタイル誌の編集長を歴任。現在フリーランスのジャーナリストとして、自動車を中心にさまざまな分野の事柄について、幅広いメディアで執筆中
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