水冷か?空冷か?ハーレーダビッドソンの新世代エンジンはどっちが楽しい?

「ナイトスタースペシャル」は2023年から「ナイトスター」シリーズに追加された上位モデルで、小ぶりのビキニカウルとタンデムシートを標準装備。メーターもスタンダードモデルがアナログ式とされているのに対して、デジタル式となっています。クルーズコントロールやBluetoothでスマートフォンと接続できる機能など、装備面が充実しているのが特徴です。

エンジンをかけてみると、Vツインらしい歯切れのいい排気音が響きます。空冷時代の「スポーツスター」と比べても遜色ない鼓動感がありますが、またがってみると乗り手の体には不快な振動はほとんど伝わってきません。この点は、現代の技術で作られたエンジンだと感じる部分です。

走り出すと車体の軽快さが際立ちます。車両重量は225kgと決して軽量ではありませんが、左右の倒し込みの操作感が軽く、街中の何気ない交差点などでも“スポーツ”を感じることができました。これは、シート下にガソリンタンクを配置する低重心の設計が効いていると思われます。

エンジンのフィーリングにフォーカスすると、回転のピックアップは現代の水冷エンジンらしくスムーズですが、適度なパルス感が伝わってきて排気音も心地いい。驚くほどのパワー感はありませんが、高回転まで回すと予想以上の速度が出ているので、実際にはかなり“速い”エンジンだといえます。

 

■2Lの空冷大排気量エンジンを搭載する「ブレイクアウト117」

空冷エンジン車として選んだのは、ハーレーダビッドソンの歴代モデルの中でも最大排気量を誇るMilwaukee-Eight 117 エンジンを搭載する「ブレイクアウト117」。チョッパースタイルの車体設計を受け継ぎつつ、エンジンの排気量を拡大したモンスターマシンです。

1923ccの空冷Vツインエンジンは102PSの最高出力と、168Nmという強大なトルクを発生。エンジンサイドには、大きなエアフィルターが顔を出していますが、これもより多くの空気をシリンダーに送るために採用されたものです。

マフラーは水平に2本並んで伸びるショットガンタイプ。エンジンをかけると迫力ある排気音が辺りに響きます。フロントホイールはチョッパーらしく21インチと大径のスリムなキャストホイール。リアには240幅という大迫力の極太タイヤを履いています。

車両車重は310kgもあるので、サイドスタンドをかけた状態から起こすだけでもかなり重さを感じます。しかし、クラッチをつないで走り出すと、ほとんどアクセルを開けていない状態でもスルスルと加速するのは、さすが1923ccの大排気量車! その分、振動も体に伝わってきますが、それもこのマシンの“味”のひとつといえるでしょう。

これだけトルクフルなエンジンだと、街乗りではアクセル操作にも気を使います。油断して少し大きめにアクセルを開けてしまうと、恐ろしい勢いで車体がダッシュします。取り回しも低重心ではありますが、重量があるので狭い交差点などでは気をつける必要がありました。

ただ、広い直線のある幹線道路に出ると、このエンジンの魅力が存分に味わえます。軽くアクセルをひねるだけで他車を置き去りにできる加速力は圧巻。しかも、余裕があることで、むやみにアクセルを開けなくなるので心置きなくゆっくりクルージングできるという不思議なマシンでした。

*  *  *

空冷か? 水冷か? という冒頭の疑問に戻りますが、今回の比較では排気量差もあって、エンジンとしての個性が強いのは空冷という印象。ただ、同じ水冷のRevolution Maxでも「スポーツスターS」に搭載される1250ccバージョンは強烈な加速力という個性があったので、水冷が個性が弱いとも言い切れません。車体とのバランスが良く、ワインディングも楽しめるのは水冷エンジン搭載車に共通する魅力なので、コーナーを楽しみたいなら水冷を、エンジンの鼓動を感じつつ直線をクルージングしたいなら空冷エンジンを選ぶのが良さそうです。

>> ハーレーダビッドソン

<取材・文/増谷茂樹

増谷茂樹|編集プロダクションやモノ系雑誌の編集部などを経て、フリーランスのライターに。クルマ、バイク、自転車など、タイヤの付いている乗り物が好物。専門的な情報をできるだけ分かりやすく書くことを信条に、さまざまな雑誌やWebメディアに寄稿している。

 

 

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