PHVに“E”が加わって何が変わった!?走行性、操縦性、インテリア…新型「プリウスPHEV」の進化点

■1日70~80kmのEV走行性能と、向上した操縦性能

▲手前(左)が「アッシュ」、奥(右)が「マスタード」という車体色

私は2023年4月中旬に公道で乗ってみました。確かに、なかなかエンジンが目覚めません。

車内のボタンで「チャージ」(エンジンを作動させて充電するモード)を選ばないと、横浜の首都高をぐるぐる回っているだけでは、ほぼ電気モーターだけで走行することができました。

「バッテリーの搭載要件としては、家で充電できることを前提に、1日70から80kmをEV走行できること、と考えました」

このクルマのパワートレインを開発した担当者が、試乗の現場で教えてくれました。

▲長距離のドライブでは、バッテリー電力に加えて、エンジンを使いHEVとして走行可能

プラットフォームは改良されたTNGAで、基本的に同じ部品を使うRAV4やハリアーのPHEVモデルに対して、プリウスPHEVは(軽いぶん)バッテリーがすこし小型化しています。

具体的には、SUVモデルが96個のバッテリーセルを搭載しているのに対して、スペース的な問題もあって、プリウスPHEVは72個。

今後の課題は、バッテリー関連部品(主に給充電器)の小型化と効率の向上、だそうです。走行距離に対して充電回数をできるだけ減らすことが、求められているといいます。

というわけで、PHEVというサブネームにある”EV”の部分に感心しましたが、印象深かったのは、それだけでありません。操縦性能が明らかに向上しているのです。

加速と減速と曲がる性能が、きれいに連動。はっきりいって、従来型は、やや加速感が突出していたり、とくに速度が上がっていくと、操縦性に多少なりともギクシャク感が出ていました。

▲「ひと目惚れするデザイン」と「虜(とりこ)にさせる走り」を同時追求

PHEVになった新型は、たいへんスムーズ。「そこは開発陣の狙いでした」と開発を指揮したトヨタ自動車の大矢賢樹主査は、私の印象にうなづいていました。

大矢主査によると、スムーズと感じる理由のひとつは、実はアクセルペダルにあるそうです。従来は吊り下げ式だったものを、今回は床面が支点となるオルガン式に変更されました。

「かかとが支点になるので足の動きが安定し、微妙な加減速が出来るようになるので、クルマの動きが自分の思いのままになると感じられると思います」

■インテリアもエクステリアも“かなり”違う

プリウスPHEVは、エクステリアもインテリアも、先代と大きく変わっています。

エクステリアは、エモーショナルな雰囲気が強くなったといえます。デザイナーによる“よりスタイリッシュに”という主張を、エンジニアが受け入れた結果だそうです。

特徴的なのは、ルーフライン(橫からみた輪郭)がすっとなめらかに前から後ろまで流れるような印象になったこと。

ネガとして空力が先代より悪化してしまうという結果が出たそうです。そこで空力の専門部署はフロントの造型を徹底的に見直し、前面投影面積、いわゆるCdA値を見直すことで空力の改善に成功。

▲先代にあたるプリウスPHV

▲プリウスPHV(2017年発売)のインテリアデザインは凝っているがややデザイン過剰か

インテリアもかなり違います。先代では、ダッシュボードからドアトリムにかけては、けっこう立体的な造型でした。複雑なラインが重なっています。

新型ではそこをすっきりさせています。

▲マチュアレッドとよばれる赤の挿し色を使ったインテリア

▲ウインドシールドの傾斜角はかなりきつめだが、パッケージ(室内の広さ)は影響を受けていない

先代は、インフォテイメントシステム用に大きな縦型モニターを備えていたり、シフターがダッシュボードから生えていたりと“こわざ”が効いていました。

新型は機能的なデザインです。ダッシュボードの表面に張ったパネルが一枚成型というのは、工作的にかなり凝ったもののようですが、全般的にシンプル。

とくに評価したいのは、メーターの位置です。ヘッドアップディスプレイに近い高さで、速度など主要な情報が見られるようなデザインです。視線の移動がぐっと少なくてすむようになりました。

▲センターコンソールには縦にスマートフォンを入れる充電用スロット

個人的には、先代のふかふかしたシートの座り心地がかなり好きでしたが、そこは残念ながらもう少ししっかりしたクッションに変わってしまいました。

ウインドシールドがレクサスLCと同じ角度にまで寝かされているのは驚きですが、乗員に圧迫感は意外なほどありません。後席も、空間といい乗降性といい、しっかり確保されています。

bZ4XのようなピュアEVを開発する一方、従来のプラグインハイブリッドシステムを進化させている。私にとって、こういう多方向の開発方針は、納得いくものです。

ただし、いくらプリウスPHEVが軽量で、かつ燃費もよくて、価格もまずまずこなれたものといっても、世界のトレンドは、ピュア電動化です。

欧州メーカーはピュアEVの小型化や低価格化に熱心です。そこにあって、日本の自動車好きとしても、プリウスPHEVの出来がいいからといって安閑としていられない気分になるのも事実です。

▲1年間でEV走行1,200km分に相当する電力を生み出すという「ソーラー発電システム」(オプション)用のソーラーパネルをルーフに搭載

▲EVとハイブリッド(エンジン使用)の切り替えスイッチ装備

【Specifications】
Toyota Prius PHEV
全長×全幅×全高:4600x1780x1430mm
ホイールベース:2750mm
車重:1570kg
エンジン:1986cc 4気筒+電気モーター
駆動:前輪駆動
最高出力:111kW+120KW(フロントモーター)
最大トルク:188Nm+208Nm(同上)
変速機:電気式無段変速
燃費:26.0km@l(WLTC)
価格:460万円

>> トヨタ「プリウス」

<文/小川フミオ>

オガワ・フミオ|自動車雑誌、グルメ誌、ライフスタイル誌の編集長を歴任。現在フリーランスのジャーナリストとして、自動車を中心にさまざまな分野の事柄について、幅広いメディアで執筆中

 

 

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