■ツーリングでの快適性を磨き上げた「アストロ-GX」
現行の「アストロ-GX」は2021年に発売された最新のツーリング向けモデル。見た目では、後頭部に大きめの“GTスポイラー”を装備している点が特徴です。アライ製のヘルメットは“R75 SHAPE”と呼ばれる曲面で構成されたタマゴ型のフォルムが特徴ですが、近年の流行であるエアロフォルムを取り入れています。
ただ、このスポイラーもタマゴ型の帽体に部品を後付けした作り。アライの安全性を実現するうえで重要な曲面によって衝撃を“かわす性能”を維持するため、強い衝撃が加わった場合はスポイラーが外れて曲面で衝撃を受け流す設計です。頭部後方の乱気流を抑え、エアロダイナミクスを向上させるので、長時間における疲労軽減に貢献します
もうひとつの特徴が、通気性の高さ。フロントの「Arai」のロゴ部分に開閉可能なダクトを装備した、その名も“フロントロゴダクト”を採用しています。同社のレース向けトップモデルである「RX-7X」にも大きめのダクトを装備していますが、“フロントロゴダクト2はツーリングなどの速度域での通気性を向上。時速50kmで約40%のエアー吸気量が増加しています。
また、頭頂部に近い箇所には左右に“Gフローダクト”と呼ばれるコンパクトながら大容量のエアー吸入量を確保するベンチレーションを装備。丸く滑らかなフォルムを維持しながら、通気性を増大させています。
そして、“GTスポイラー”の内側にも頭部の熱気を負圧で引き出すエアーアウトダクトを装備。フロントからエアーを取り入れるだけでなく、後方から熱気を抜くことでツーリングでの快適性を大きく高めています。
■安全性と使いやすさを向上させたシールドシステム
筆者は30年ほどアライ製のヘルメットをかぶっていますが、近年の大きな進化だと感じるのはシールドシステム。
昔のアライのヘルメットは、シールドが着脱しやすいとはいえませんでした。しかし、2015年から採用されている「VAS」と呼ばれるシールドシステムは、着脱が簡単で、シールドを交換したり清掃したりする作業が飛躍的にしやすくなっています。
ただ、このシステムも元は安全性を高めるために採用されたもの。
新旧モデルを比較するとわかりやすいですが、シールドの取り付け部分が24mm下げられています。これによって帽体の丸い面積がより広く確保できるようになり、安全性がさらに向上しているんです。
シールドの取り外しは簡単。シールド内側にある黒いレバーを押すと取付部のカバーが外れ、シールドを閉める方向に動かすだけです。取り付けも、ピンを赤い溝の部分にはめて、シールドを閉める方向に動かすだけと手軽にできるようになっています。
アライのシールドは、雨天でも曇りにくいことに定評がありますが(MotoGPで活躍したダニ・ペドロサ選手が雨のレースで試用し、曇にくさからヘルメットメーカーを切り替えた逸話は有名)、曇り止めの「ピンロックシート」を装着することで、さらに曇りにくくすることが可能。これをつけると、口元で息を吹きかけても曇らせることができないくらいになります。
また、ツーリング向けには「プロシェードシステム」というシールドも用意されています。これは、サンバイザーを兼ねるスモークシールドが一体となっているシールドシステム。スモーク部分を上げておけばサンバイザーとして機能し、下げればスモークシールドになるという便利なシステムです。
このシステムにも、バイザーをヘルメット本体に装備するのではなく、シールド側に一体化させることで“かわす性能”を損なわないようにというアライの考え方が現れています。