■ソフトトップ格納時も流麗なボディ
実車を見て思う最大の良さは、なんといってもスタイルだ。
流麗という形容が似合うローマのボディに、クローズ時もコンパクトなソフトトップはよく似合う。
ファブリックやステッチなどのオプションが多数で、ソフトトップのカスタマイゼーションも可能、とフェラーリ・ジャパンでは説明するが、ただし、個人的にはスパイダーボディなら黒がいちばん。
なぜかというと、スパイダーといって、車高を低くしたオープンのスポーツカーは、そもそも幌なしで乗るのが正統的なスタイル。ゆえに幌をかけても、存在を際立たせては野暮となってしまう。
英国の紳士傘が元来、黒というのも、おなじ理由。雨の多い英国にあっても英国人はあまり傘を差さないし、差しても目立たない黒を選んできた。歌舞伎でいえば黒子みたいなもの。
ローマスパイダーの場合、リアのシートに組み込まれた特許取得の新開発のウインドディフレクターをそなえているので、オープン走行時も風の巻き込みが少ないよう考慮されているそうだ。
くどいようだけれど、風に巻かれてのオープンドライブだって、このすばらしいスポーツカーのドライブスタイルにはよく似合うと思うのだけれど、快適性の追求は避けて通れないのだろう。
「私たちは、オープンカーを愛する人、そして初めてオープンカーを試してみたいと思うお客様のために、特別なクルマを作りました」
フェラーリ・ジャパン代表取締役社長のフェデリコ・パストレッリ氏は、発表会会場で、上記のように述べている。やっぱり。でも、まあ、それで良しとしよう。
■最高出力760Nmの最大トルクを持つ3855ccV8ターボエンジン搭載
シャシーは、従来のクーペと同様、総アルミニウム製。フロントに456kW(イタリア式表記だと620CV)の最高出力と760Nmもの最大トルクを持つ3855ccV8ターボエンジン搭載の後輪駆動だ。
ただし、幌を格納してもリアセクションの「エレガンスが損なわれないよう」(フェラーリ・ジャパン)造形に注意が払われている。
同時に(スタイルが最優先された昔と違い)ハンドリングがクーペと同等になるようにと、ボディシェルとシャシーのねじり剛性とビーム剛性はしっかり確保されたという。
加えて、Aピラーおよびウインドスクリーン周囲も(当然)変更されている。ただしすべてを総合しての重量増はクーペに対して84kgにとどまったとフェラーリでは胸を張る(ように記述している)。
ソフトトップは、現行モデルの格納式ハードトップと同等の快適性が確保されていると謳われる。耐候性や静粛性のため5層で、リアはガラスがはめこまれている。
風を受けて幌がふくらむバルーン現象にも特別の注意を払ったと、フェラーリではプレスリリースに記している。
【Specifications】
Ferrari Roma Spider
全長×全幅×全高:4656x1974x1306mm
ホイールベース:2629mm
車重:1476kg
エンジン:3855cc V型8気筒ターボ
駆動方式:後輪駆動
最高出力:456kW@5750〜7500rpm
最大トルク:760Nm@3000〜5750rpm
変速機:8段ツインクラッチ
価格:3280万円
<文/小川フミオ、写真提供/フェラーリ・ジャパン>
オガワ・フミオ|自動車雑誌、グルメ誌、ライフスタイル誌の編集長を歴任。現在フリーランスのジャーナリストとして、自動車を中心にさまざまな分野の事柄について、幅広いメディアで執筆中
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