■ドライブトレインは3種類
私にとって興味深かったのは、ドライブトレイン(バッテリーと駆動方式の組合せ)が3種類、用意されることです。
性能がまあまあで比較的廉価なバッテリーを後輪駆動システムと組み合わせたモデルは、基本的に市街地用。高性能バッテリーに置き換えたモデルは、巡航距離480kmの長距離用。3つめは、高性能バッテリーに、前後モーターの4輪駆動システムの組合せ。静止から時速100kmの加速が3.6秒と、スーパースポーツカーなみです。
内外装はシンプルさを身上としている感があります。グリルを持たないフロントマスクと、超が付くぐらいシンプルに仕上げられたダッシュボードが特徴的です。
「グリルレスにしたのはピュアEVであることを強調するため。内装ではスイッチ類を極力減らして位置もまとめたことで、デザイン上の特徴が出るとともに、部品点数が減って製造過程がいちぶ省略され、結果として二酸化炭素排出量が減少します」
エクステリアとインテリア、それぞれ担当したボルボ・カーズの2人のチーフデザイナーが、口を揃えるように、大意、上記のように教えてくれました。
■素材の95パーセントを再利用できる設計
インテリアは、北欧の自然をテーマにしたとかで、ゆるやかなカーブと、抑制の効いた色づかいが目をひきます。
シートも、ボルボ車の魅力であり続けてきた部分。EX30でも複雑なカーブで構成され、座り心地がよさそうだし、長い距離走っても疲労度は少なそうです。
同時に、シートを覆う表皮は、リサイクル素材が多用されました。「デニム、亜麻、リサイクルポリエステルを約70%含むウール混紡素材など、リサイクル素材や再生可能素材を数多く使用しています」とはボルボ・カーズによる広報資料内の説明。
たとえば、今回はデニム素材も「インディゴ」の名でシートに採用されました。ジーンズがリサイクルされるとき、廃棄物として処分される短い繊維を回収し(中略)使用したものだそうです。
「EX30は、そのライフサイクル終了後においても、素材をリサイクルし、またリサイクルできない部分からはエネルギーを回収することで、95%まで再利用できるように設計されています」
ボルボのプレス向けリリース内の文言です。ここまではっきり言えるのは、すばらしいことだと思います。
株主対策としても、いまは未来に向けていかに地球環境保全(サステナビリティ)に取り組んでいるかを明言できない企業はマズい、という認識が拡がっているのではないでしょうか。
EX30は、ベーシックモデルが3万6000ユーロから。欧州の一部の国では、発表と同時に発売も開始されました。日本でもまもなく発売されるとか。
全長4.2m、全高1.55mのEX30。適正価格がつけば、日本でもいい線いくのでは、と思わせる内容を持っていました。
<文/小川フミオ>
オガワ・フミオ|自動車雑誌、グルメ誌、ライフスタイル誌の編集長を歴任。現在フリーランスのジャーナリストとして、自動車を中心にさまざまな分野の事柄について、幅広いメディアで執筆中
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