■モデルは違えど、ぱっと見でアストンマーティンとわかるデザイン
アストンマーティンが手がける2プラス2のGTは、ご存知のとおり「DB」の名を持っています。
戦後から70年代まで、さきのDB5のようにヒット作を手がけるとともに、ルマン24時間レースで優勝するなど、ひとつの黄金時代を気づいた当時のオーナー、デイビッド・ブラウンに敬意を表して頭文字を使います。
同時に、アストンマーティンのデザイナーは伝統を今も大事にしています。もちろんDB5(63年)とDB12では、60年の開きがあるので、似ても似つかないモデルに仕上がっていますが、それでも、ぱっと見でアストンマーティンとわかるデザインです。
「意識したのは、伝統的なグリルを継承して使うことでした」
現地でインタビューに応えてくれたデザイナーのマイルス・ニュルンバーガー氏は、DB12のデザインは、過去からのヘリティッジを強く意識したと言います。
ほかにも、長いエンジンフード、ドライバーが(極端なことをいえば)後輪の上に座るようなポジション、大径(21インチホイール採用)タイヤ、それにルーフラインやウインドウグラフィックスなど、特徴が多々見受けられます。
プロポーションは、英国の伝統的なスポーツカーのそれを強く意識しているようにかんじられます。しかもフロントエンジンで後輪駆動。いつまでこのレイアウトが続くかわかりませんが、同社製品の個性となっているのは確かです。
もうひとつ、伝統的な雰囲気が引用されているのがインテリア。菱形のステッチを使うシートや天井やドアの内張りといった部分は、英国車で見られるクラフツマンシップを彷彿させます。
同時に、インフォテイメントシステムやドライブモードセレクターなど、デジタライゼーション技術を搭載。しかもギアセレクターがボタン式でなく、レバー式になってうんと使いやすくなっています。
デザインを見ていると、クルマ好きは(きっとポルシェやマセラティのオーナーでも)ふらふらっといい気分になるのでは。とにかく雰囲気がいいんです。
■各段に上がったコーナリング性能とマイルドな操縦感覚
ドライブ感覚はというと、ベースになったDB11より、格段に操縦性が上がっています。
スポーツドライビングが好きな人には、カーブを曲がるときの安定性が向上し、コーナリング能力がうんと上がっているのに感心するはず。
一方、運転のしやすさというか、やたらカリカリしていない、あえてスポーツ性をすこしマイルドにしたような操縦感覚はほかにないもの。私は感心しました。
鈍さは(もちろん)ありません。ステアリングフィールなど、とてもよくて、路面とのコンタクト感覚はしっかりあるし、ハンドルを切り込んだときの車体の動きも一体感を感じさせるもの。
電子制御のダンパーを採用し、同時にスプリングやブッシュ類などの設定を見直した効果が、しっかり現れているのです。
一方、新しいタイヤ(ミシュラン)のおかげで、「乗り心地と静粛性が、スポーツ性とともに格段に向上しました」(開発担当者)との言葉は本当でした。
日本での販売価格は2990万円。アストンマーティンジャパンによると、日本へのデリバリー開始は2023年の年末頃を予定しているとのことです。
【Specifications】
Aston Martin DB12
全長×全幅×全高:4725x2060x1295mm
ホイールベース:2805mm
車重:1685kg
エンジン:3982ccV型8気筒
駆動:後輪駆動
最高出力:500kW@6000rpm
最大トルク:800Nm@2750〜6000rpm
静止から時速100km加速 3.6秒
価格:2990万円
<文/小川フミオ、写真:Aston Martin Lagonda>
オガワ・フミオ|自動車雑誌、グルメ誌、ライフスタイル誌の編集長を歴任。現在フリーランスのジャーナリストとして、自動車を中心にさまざまな分野の事柄について、幅広いメディアで執筆中
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