■六本木→西麻布→表参道→代々木公園
六本木の辺りまで走ったところで、路駐しているクルマも増えてきました。車道の左側にクルマが停まっていなければ走りやすいのですが、駐車しているクルマがあると、右側に避ける必要があります。が、これが結構怖い。クルマのドライバーとしても電動キックボードに慣れていないということもあるのでしょうが、ギリギリをかすめていくクルマがあったりすると危なく感じます。
そんなともあり、この辺りからは裏道というか細くてクルマの通りが少ないような道を選んで走るようになりました。
そして、六本木の辺りは急な坂道も多いので、「KS6 PRO」の登坂性能を試してみることに。自転車でも電動アシストがないと登れないような急坂でしたが、スピードは落ちるものの、アクセルを開け続けていれば問題なく登って行くことができました。
登ったら下ってみたくなるので、同じ坂を下ってみましたが、登りよりも下りの方が緊張しました。ホイール径が小さいので、路面の凹凸にハンドルを取られやすいこともあり、ブレーキを掛けながらゆっくり下って行くのが良さそう。「KS6 PRO」はフロントがドラムブレーキ、リアがディスクブレーキになっていて、制動力の高いリアブレーキで速度調整しながら下るのがやりやすかったのですが、フロントブレーキが効くモデルで急ブレーキを掛けるのは危ないかも。
また幹線道路から、細い路地までさまざまなタイプの道を走ってみましたが、やはりクルマの通りが少ない道の方が走りやすい。狭い道で後から来たクルマに抜かれるのは少し緊張しますが、道端に寄ってやり過ごせばいいので、路駐のクルマを避けるときほどの怖さはありませんでした。ただし、電動キックボードはエンジン音などがしないので、歩行者や自転車の人には気付かれにくいため、配慮が必要です。歩道を6km/h以下のモードで走る際は最高速度表示灯が点滅する音がするので、それほど怖くはなかったのですが、20km/hのモードで狭い道を走る際は注意したほうが良さそうです。
今回、一番緊張したのは、表参道のクルマがたくさん駐車してあるエリアを通ったとき。駐車しているクルマのドアが開いたり、クルマに乗り込むために人が出てくることもあり、かなり気を使う必要がありました。さらに同じ左側を走る自転車やバイクも少なくないので、そうした乗り物との共存も課題ですね。
途中、撮影をしながらだったので、時間はかかりましたが、目的地に設定していた代々木公園に無事到着。
走ってみて感じたのは、シェアリングサービスの15km/hしか出ない電動キックボードよりも、20km/h出る方がストレスは少ないということ。最高速度が15km/hだと、クルマだけでなく自転車やバイクとの速度差も大きいので、抜かれるときに怖かった記憶がありますが、20km/hまで出ると速度差がそこまでないので恐怖感は少なくなっています。
■注意点とメリットは?
今回、都心部のさまざまな道を走ってみて注意すべきと感じたのは「クルマからどう視認されているのか」ということです。16歳以上ならば免許を持っていなくても乗れるようになったことで、クルマやバイクで公道を走ったことがない人が乗車する機会も増えるかと思います。乗車の際は、自分の電動キックボードがクルマやほかの人たちからどのように見えているか、これを常に意識しておく必要はあると感じます。
上の写真は、クルマの中から走行する電動キックボードを撮影したものですが、自転車やバイクと比べても決して視認しやすいとはいえません。場合によっては、歩行者と区別がつきにくい場合もあるのに、速度は20km/h出ます。そして、左側に停まっているクルマなどがあったらクルマの前に出てきたりもするので、クルマのドライバーから見れば注意すべき存在です。路駐しているクルマを避ける場合などは、きちんと後方確認をして、可能な限りドライバーとアイコンタクトを取ったほうがいいでしょう。
また、ハンドルにマウントされたウインカーの場合は、上の写真のように乗り手の体で隠れてしまい、後方からは視認しづらくなります。ウインカーを出したからといって、突然車線変更をするとかなり危ない場面もありそうです。
そして夜になると、電動キックボードの被視認性はさらに悪くなります。
前方から見た場合は、ヘッドライトも最高速度表示灯も点いているので、それほど悪くはありません。
しかし後方から見た場合、テールライトなどがかなり下のほうについているので、かなり見づらい。夜間に乗るのであれば、ヘルメットの後方に反射板を付けたり、反射素材のバッグやウェアを身に付けるなど、自衛策を考えたほうが良さそうです。
とはいえ、20km/hまで速度が出せるようになったことは大きなメリットです。移動手段としての有用性は高まっているように感じました。
2〜3kmを超える距離を移動するなら、電動アシストのシェアサイクルを使った方がラクなのではと思っていましたが、実際に走ってみると登り坂でも20km/hを維持できるので、体力的にはかなりラク。ペダルを漕がなくていいので、汗をあまりかかないのもメリットといえそうです。
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文字通り、公道を走り始めたばかりの電動キックボード。乗る側も周囲の人たちも慣れていない状況です。そんななかで交通ルールを無視したような走り方をすれば、危険な事故に繋がりかねません。また、“危険な乗り物”のレッテルを貼られることになってしまうでしょう。これから電動キックボードに乗るのなら、第1回の記事で紹介した法規をきちんと理解し、周囲の交通状況を見ながら危なくないように走ってほしいと願うばかりです。
<取材・文/増谷茂樹 写真/松川忍 協力/長谷川工業>
増谷茂樹|編集プロダクションやモノ系雑誌の編集部などを経て、フリーランスのライターに。クルマ、バイク、自転車など、タイヤの付いている乗り物が好物。専門的な情報をできるだけ分かりやすく書くことを信条に、さまざまな雑誌やWebメディアに寄稿している。
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