「せっかくだから2.2リッターディーゼルがいい」と考える方にも、グッドニュース! ディーゼルエンジンのガラガラ音を低減させる“ナチュラル・サウンド・スムーザー”が、従来から設定されていた1.5リッターディーゼルはもちろん、新たに2.2リッターディーゼルにも採用されました。
念のため復習しておきますと、ナチュラル・サウンド・スムーザーとは、ピストンのヘッドに組み込まれる棒状のパーツ、のこと。ピストンの上下動に合わせて左右がしなり、ディーゼルエンジンが発生するノイズ(=ノック音)と逆位相の周波数を発生させます。両波をブツけることでノイズの山谷をならす、つまりノイズキャンセルの効果を狙ったデバイスです。
しかも! 今回の大幅改良に合わせて、2種類のディーゼルターボには、さらにノイズを低減する工夫が施されたのです。大きなノック音はナチュラル・サウンド・スムーザーで抑え込み、さらに小さなノイズは、ガラガラ音発生の元となる“構造系共振”に、燃料を燃やす際に発生する“エンジン加振力”をブツけることで退治するのです。
普通なら、構造系共振とエンジン加振力は微妙に合わさって、ノイズを増幅させてしまいます。それを、燃焼噴射のタイミングを0.1ミリ秒単位で制御することで、具体的には、メイン燃焼に先立つプレ燃焼の時期をわずかにズラすことで、両者の波形をノイズを打ち消す方向に働かせるのです。名づけて“ナチュラル・サウンド・周波数コントロール”。
…と記述すると、いかにもスマートに解決したようですが、そこに至るまでには、泥くさいトライアルが何度も繰り返されたようです。例えば、1分間に何千回も上下するピストンに振動センサーを3箇所も取り付け、(切断されないよう)丈夫なチタン製のコードをシリンダーの外に伸ばしてデータを回収。ピストンの伸び縮みを“見える化”して解析を進め、ノイズの発生原理を探った、といいます。ピストンアームの溝の中に接着剤で埋まったセンサーを目にすると、研究者の“執念”といったものを感じます。
ちなみに、自身がしなることで有用な周波数を発生するナチュラル・サウンド・スムーザーは、なんと! ピストンに組み込まれる前に“全量”をチェックするのだとか。原理上、正しい周波数が生起しないと意味がありませんからね。万が一、左右の質量が規定どおりなっていない場合は、スムーザーの端を削ることで調整するといいます。
(失礼ながら)大衆車メーカーの大量生産モデルに使うエンジンパーツに「そんな手間ひまかけて大丈夫か!?」と、部外者ながら心配になります。まぁ、かつてはロータリーエンジンに使う“エキセントリックシャフトを”手作業で仕上げていたマツダのことです。この手の工程に関する、ある種の“ノウハウ”と“覚悟”があるのでしょう。
SKYACTIV-Dユニットのスムーズさに感心するとともに、1本、1本、ナチュラル・サウンド・スムーザーを検品しているスタッフの方々に、感謝したいと思います。