ひと口目の印象は“まろやか”。軟水に似た舌を包み込むような仕上がりに、ちょっとびっくり。個性強めの豆なのですが、元々持っている強めの酸味が抑えられ、飲みやすいコーヒーになっています。そして後味に際立つ甘さ。甘みもこの豆が持つ個性なのですが、そこがしっかり引き出されています。
たしかにこれはパンに合う。コーヒーらしさはしっかり残しつつ主張を控えめに仕上げたフードペアリングに最適な一杯です。
このあと、シティロースト(中深煎り)のブレンド豆を同じくM(マイルド)で淹れてみましたが、こちらも苦味が抑えられ飲みやすく仕上がりました。
コーヒーの苦手な部分としてよく挙がる“酸味”や“苦味”ですが、それらを抑えつつ、ちゃんとコーヒーとして成り立たせた味わいです。
ハンドドリップでコーヒーを抽出する際、お湯は何回かに分けて落とします。でも実は最後のほうでは、ほぼコーヒー成分が抽出されません。しかもその時に雑味(エグさや渋さ)が出やすい。それらをカットし、そして濃く出てしまったコーヒーの濃度を最後にお湯で調整する“バイパスドリップ”、さらに台形ドリッパーと長めの蒸らし時間、そして蒸らし前のスチームというハンドドリップではできない工程により、独特の味わいが生み出されているのかもしれません。
差し湯をしない濃く抽出できるD(デミタス)モードでアイスコーヒーも淹れてみました。
カップに氷を淹れておいて、そこに抽出していきます。
これ、めちゃ美味い! 時間をかけて作るまろやかな仕上がりのコールドブリューと、ハンドドリップで抽出後に氷で一気に冷やす急冷式の中間。コーヒーの個性は残しつつ、まろやかさもある、絶妙な味わいのアイスコーヒーになりました。いやホントおいしい。
* * *
豆と水を用意すればいいだけの全自動のコーヒーメーカーとは違い、この「コーヒーブリュワー」は挽いた粉を自分で用意しなければなりません。コーヒーは直前に豆を挽くことで最もおいしく淹れられます。だから、やっぱり全自動より手間はかかります(もちろん粉を買ってくるでもいいのですが)。
でもミル(グラインダー)が付いていない分、お手入れは簡単。
ドリッパーが覆われた形状になっているので、粉にお湯が触れた時に立ち上るアロマ(コーヒーの香り)を感じづらいという点と、一杯落とし方式なので複数人数分をまとめて淹れられないというデメリットはありますが、トーストに合うコーヒーというのは間違いない。そして飲みやすいコーヒーを淹れるというある意味この商品が持つ個性は、他のコーヒーメーカーでは味わえない特徴でもあります。コーヒー好きはもちろんですが、むしろコーヒーをあまり飲まないという人にこそ体験してほしいコーヒーメーカーです。
>> 欲しくなるコーヒー道具
<取材・文/円道秀和(&GP)>
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