■用途別のラインナップと走り心地
EX30は、なによりクルマですから、造型も大事ですが、走りの質が重視されるプロダクトです。その点でも、いいレベルに達していると思いました。
私が感心しているのは、ラインナップです。
廉価版のバッテリーを使って市街地を中心に使う人向けの「シングルモーター」があり、高速移動も多い人向けのパワフルなバッテリーの「シングルモーター・エクステンデッドレンジ」があり、走りを重視するひと向けの「ツインモーター」があるというぐあい。
日本にはまずモーター1基をリアに搭載しての後輪駆動「シングルモーター・エクステンデッドレンジ」が導入されるので、私はこのモデルを中心に試乗しました。
ひと言でいって、スムーズ。過剰もなく不足もない、といった感じで、加速性はいいし、ハンドルを操舵したときのクルマの動きは気持ちいいし、乗り心地も快適。そして静かでした。
バルセロナ周辺の高速道路では交通の流れをリードできるし(最高速は180kmに設定されていますが、さすがにそこまでは…)、丘陵地帯のゆるやかなワインディングロードを走るのも、期待以上に楽しい体験でした。
「可能な限り、何も意識せずにドライブできるクルマにしたかったんです」。現地で話を聞いた、スウェーデン本社からきた開発担当者は、そう語っていました。その言葉どおりの出来だと私も同感。
サイズを小さめにしたのは、市街地での扱いやすさ、とボルボでは説明しています。いまは、大型SUVのEX90の登場が控えているし、その先には現行のXC60の後継にあたるようなモデルも出てくるかもしれません。
■ナチュラルな感覚で乗れるBEV
EX30は、ホイールベースも2.65mと比較的コンパクトですが、エンジンも燃料タンクも持たないためパッケージングがすぐれていて、後席に175cmの人が2人座っていられます。
なので、日本で使うのにも、よさそうです。満充電での走行可能距離は560km(WLTC)とボルボカージャパンでは発表しています。
高出力の急速充電器を使った場合、バッテリー残量10%から80%まで充電するのに要する時間は26.5分と発表されています。90kWとかだと、もう少し時間がかかるでしょう。
でもバッテリー残量が20%を切ると、充電をうながすサインとチャージングステーションの地図が出ると、発表時の本国のリリースにはあります。ぎりぎりまで充電しないというのも勇気の要ることなので、この警告のお世話になることはないかもしれませんが、ちょっとした安心材料です。
ボルボEX30に乗ると、海外ではこんなにナチュラルな感覚で乗れるBEVが登場してる事実に、改めて驚かさせるのです。
【Specifications】
Volvo EX30 Single Motor Extended Range
全長×全幅×全高:4235×1835×1550mm
ホイールベース:2650mm
車重:1790kg
動力:電気モーター1基
駆動:後輪駆動
最高出力:200kW
最大トルク:343Nm
バッテリー:リチウムイオン 69kWh
巡航距離:560km
価格:559万円
>> ボルボ EX30
<文/小川フミオ、写真/ボルボカージャパン>
オガワ・フミオ|自動車雑誌、グルメ誌、ライフスタイル誌の編集長を歴任。現在フリーランスのジャーナリストとして、自動車を中心にさまざまな分野の事柄について、幅広いメディアで執筆中
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