「ARC」は、2021年の「FREE」発売時から開発が進んでいたようです。世に多く存在するカラーや素材を少し変えただけのアニバーサリーモデルではなく、搭載ツールが大きく異なる、全くの新商品になります。
ブレードに関してはマニアではありませんが、「ARC」に採用されたマグナカットは見惚れる美しさと切れ味を備えています。ステンレス鋼ではありますが、ステンレス鋼に多く含まれるクロムを除去。炭素鋼のような靭性を持ち、ステンレス鋼のような耐食性をもった新しい鋼になります。抜群の切れ味と錆にくさを両立した世界中のナイフメーカーが注目する素材です。
ブレードはワンハンドオープンが可能。ブレード基部付近にある突起に親指が掛けやすく、非常に開きやすい。収納する際も片手で操作できます。マグナカットを採用したナイフはどれも5万近くするものが主流なので、このブレードだけでもかなり価値のある存在です。
そして「FREE」シリーズでも好評のマグネット機能が付いています。折り畳んだ状態からエンドのマグネットを外すとハンドルがフリーになり、片方のハンドルを握って軽く振ると、もう片方のハンドルが弧を描いて開きます。両方のハンドルをロックするラチェット音(カチカチとした音)がすると展開完了。このラチェット音と感触が気持ちいい。何より片手で開閉できるのが良いですね。アウトドアシーンでは片手が塞がるシーンも多いと思うので、ワンハンドオペレーションは実に便利です。
標準的なAスタイルのプライヤーは、フルサイズモデルとしてはやや厚みの薄いタイプで使いやすい。先端まで滑り止めのトレンチが切ってあるので、細かい物も掴みやすいですね。ワイヤーカッターは交換可能な154Cを採用。ハードな使用でも交換可能なので気兼ねなく使えます。プライヤーにはスプリングは内蔵されていません。
多機能なマルチツールにありがちな、メインツールのナイフやノコギリ以外の「サブツールを取り出しにくい問題」を解決したフリーアクセス機能。基部にある突起を親指の腹で押すとサブツールだけが起き上がります。目的のツールを展開し、それ以外を畳む。従来モデルや他社製品と比べて格段に使いやすいシステムです。
ドライバービットやマイクロビットは交換が可能。本体に備えるプラスとマイナス以外に9本のビットキットが付属し、計20種の用途に使えます。個人的にはヘキサタイプだけでも1.5mm〜5mmまで6種類あるのが嬉しい。
ドライバー以外も幅広のマイナス、キリ、缶切り、栓抜きなどがあります。幅広のマイナスドライバーは、自動車関係のユーザーには好評のツールです。取り出しやすい位置にあるのも良いですね。元々、レザーマンの生みの親であるティム・レザーマンは、旅行先で使ったオンボロレンタカーを修理する際にマルチツールを作ることを思いついたと言われています。
性格と用途がハッキリと分かれたヤスリ。比較的安価なモデルだと用途の区別がよくわからないヤスリが多いですが、レザーマンのそれはハッキリしています。金属ヤスリはこのタイプが一番使いやすい。ナタや斧のタッチアップにも使えます。
フルサイズモデルの定番ツールであるノコギリ。木の枝を切るには充分な強度と切れ味があります。ナイフをはじめ、外側に付いたツールはすべて片手で展開できます。
そしてハサミは、使える位置に収まりました。
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ビットキット抜きで20種のツールを備えたフルサイズモデル。重量は244gとかなりずっしりとした重量感ですが、ツールの数や大きさから比較すると割と軽いかも知れません。ビットキットを収納可能なグレーのナイロンポーチが付属します。
これまで最も高価だったチタンハンドルを有する「CHARGE+ TTi」を凌ぐ「ARC」。もちろん円安の影響も多分にあるかと思いますが、性能、品質ともにアニバーサリーモデルにふさわしい造りです。マニアとしては飾っておきたい衝動に駆られますが、この使いやすさと厳選されたツールの素晴らしさは、使ってこそ味わえるものです。
>> レザーマン
<取材・文/GOL 取材協力/レザーマンツールジャパン>
GOL|現在、東京近郊の山村と都会で二拠点生活をしています。ライター業がメインですが、地方の魅力発信にも力を入れています。実地でのレビューがしやすい環境を活かしてアイテムを紹介していきます。
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