■クラウンシリーズでもっともアグレッシブなスタイリング
クラウンスポーツは、16代目になる新型クラウンシリーズの1台。4つのバリエーションという驚きの展開の中、クラウンでもスポーティなモデルが欲しいという顧客向けに開発されています。
まずスタイリング。クラウンシリーズでもっともアグレッシブで、まとまりよく見えるフロントマスクは、大きなバンパー一体型エアダムが力強い印象です。
側面から見ると、4720mmの全長に対して1565mmに抑えられた全高のおかげで、SUVと言われるわりに、はるかにスポーティに見えます。
トヨタでいうと、ハリアーとの近似性が頭に浮かびましたが、ハリアーよりホイールベースが80mm長いのに対して、全高は95mm低いので、並べてみると、まったく違う雰囲気でしょう。
しかもクラウンスポーツは、後輪まわりのフェンダーの力強い張りだしが眼を惹きます。これだけ立体的なボディパネルを成型するのは大変だったと、担当したデザイナーが教えてくれました。
クラウンスポーツHEVは、2487cc4気筒エンジンに、電気モーターの組み合わせです。前輪はエンジンで、後輪はモーターで駆動する、いわゆる「E-Four」が採用されています。
ちょっとマニアックですが、クラウンシリーズの凝っているところは、同じクラウンでも、車型どころか、ドライブトレインが何種類も用意されているところ。
クラウンスポーツは、HEVもこのあと登場するPHEV(プラグインハイブリッド)も、「クロスオーバーG」と同じ、シリーズパラレルハイブリッド。
一方「セダンHEV」は4段ギアを組み込んだマルチステージハイブリッド、「クロスオーバーRS」はエンジンとモーターを直結させる機構に加え後輪駆動用のモーターを大型化したデュアルブーストハイブリッドなのです。
クラウンスポーツは基本的にクラウンクロスオーバーと土台になるプラットフォームを共用しますが、「動力性能を追求して」(トヨタのエンジニア)サイズはややコンパクトになっています。
ホイールベースは80mm短縮されていることをはじめ、全長は210mm短くなっています。一方で、全幅は40mm拡大し、全高は25mm上がっています。
■気持ちよい走り、驚きのサスペンションシステム
走りは、ひとことでいうと、気持ち良いものでした。発進も、高速道路での追い越し時も、加速性がよく、すいすいと走れます。後輪操舵システム搭載なので、高速時の安定性とともに、カーブを曲がるときの車体の動きに俊敏さが感じられます。
後輪操舵システムは、速度域が高いと、前輪が向いたのと同じ方向(角度は違いますが)に後輪が向きます。一方、車庫入れ時などの低速では反対方向を向くことで、前輪と後輪の距離が短くなったのと同じ効果をもたらします。
サスペンションシステムの設定は、「クラウンのイメージを守りつつ、スポーツ性を追求しました」と開発担当者は説明。ハンドルを切ったときの車体の動きはよくて、それでいて、ゴツゴツ感はかなり抑えられています。
私は、ずっとトヨタ自動車のサスペンションシステム開発技術にかなり深い敬意を抱いてきました。クラウンスポーツでも、GRのようなスポーツ性は敢えて採用していませんが、クルマとの一体感が感じられ、それでいて、クルマが”もっととばせ”なんて急かすような雰囲気はありません。
同時に、路面の凹凸のこなしかたは驚くばかり。驚愕って言葉を使いたくなるのが、段差ごえのとき、まるで猫とかプードルの身のこなしのように(笑)、ふんわりと、乗員にいっさいのショックを感じさせないのです。
■「スポーツ」と銘打ってはいてもおとなしめなインテリア
インテリアは、基本的アーキテクチャーが、前輪駆動ベースのクラウンシリーズ(クロスオーバーと追って登場するエステート)と共用なので、スポーツと銘打ってはいても、どちらかというと、おとなしめ。
ダッシュボード中央の12.3インチのインフォテイメントシステムのモニターをはじめ走行と直接関係ない機能が、スポーツというわりに目立ちすぎのきらいはありますが、それでも、運転席と助手席を色で分離するなど、凝るところはちゃんと凝っています。
後席もスペースがきちんと確保されていて、大人4人での旅行にも十分使えるでしょう。荷物が多いひとは、後席シートがやや小さくなってしまいますが、大きな積載力を持つエステートを待ってから決めるという手もあるでしょう。
燃費は、リッター21.3km(WLTC)。このサイズのクルマにしてはかなりりっぱです。モノグレードで、価格は590万円です。
>> トヨタ クラウンスポーツ
<文/小川フミオ>
オガワ・フミオ|自動車雑誌、グルメ誌、ライフスタイル誌の編集長を歴任。現在フリーランスのジャーナリストとして、自動車を中心にさまざまな分野の事柄について、幅広いメディアで執筆中
【関連記事】
◆2種類のハイブリッドシステムを用意!走りを楽しむならクラウン・クロスオーバー「RS」という選択肢
◆「ジャパンモビリティショー2023」は電気自動車のオンパレード!海外勢と日本勢その動向は
◆4つのカメラで前後左右を歪みなく撮影!ドラレコとしての基本スペックも申し分なし!
- 1
- 2