■分厚い刃と石突きのおかげで刃こぼれしにくい
「鍛造バトニング鉈」というだけあり、バトニングに最適化した刃を採用しています。
最低でも刃厚3mm以上でコンベックス(蛤刃)またはスカンジグラインドのフルタングナイフ選びではこれらがバトニング向きとされています。
「鍛造バトニング鉈」はどうかというと、刃厚6mm。
振り下ろして薪を割る鉈では重さを利用して楽に割れるよう刃厚10mmほどのものがありますが、バトニングなら6mmでも十分と言えるでしょう。
もちろんハンドルの端まで伸びているフルタング。
次はグラインドをチェック。
刃先にかけてわずかに丸みを帯びてふっくらしているコンベックスグラインド、蛤刃です。刃こぼれしづらく、薪の繊維に沿ってぐいぐい押し分けていく形状なんですね。
通常、力が地面に逃げるとなかなか薪が割れないので、厚めの板や専用の台に薪を載せて作業します。多少なりとも高さがあるので、慣れた人であれば刃先が地面につかないようにコントロールできますが、まれにタイミングをはずして地面や薪割り台に突き刺してしまうことがあるわけで。不慣れな人はなおのことそうなりやすいんです。
いくらタフな刃でも石など硬いモノに当たったり、食い込んだ刃を無理に引き抜こうとすると欠けてしまうことも。
その点「鍛造バトニング鉈」は刃の先に石突を装備しているので石から刃を守ってくれるし、台に食い込むことはありません。
先端が丸みを帯びたデザインなのもケガのリスクを低減しているとのこと。刃長わずか10cmですが“家族みんなでバトニング”の知恵が詰まっています。
■市販の薪をバトニング
市販の針葉樹と広葉樹の薪を割ってみました。
板を薪割り台替わりにしましたが、石突があるので思いっきり背をたたけます。
自動車の板バネや耕運機のツメに採用されるシリコンマンガン鋼を、600トンもの力でたたきあげた刃は強靱で、ガンガンたたいても大丈夫。
針葉樹は気持ちよくスパッと割れ、節ありだと厳しいですがナイフでは厳しかった広葉樹も割れました。爽快!
小降りで扱いやすい「鍛造バトニング鉈」は、ナイフ的な作業も得意。
木の繊維に沿って表面をスーッと滑らせることで薄く削れるし、反対にぐいっと力を込めると木に食い込んで厚い羽根を作れます。ちょっと感動。
「鍛造バトニング鉈」はフルタングですが重心がだいたい真ん中にあります。これがコントロールしやすく、繊細な作業ができる理由。
疲れにくいので木工の荒削りに使ってもよさそう。
ちなみに、FEDECA「折畳式料理ナイフ」は隙間に入った汚れを落とせるよう、真鍮製ネジをゆるめられるようになっています。
「鍛造バトニング鉈」にも似た真鍮製ネジが付いていますが、緩み止め剤を使っているので取り外し不可。カスタム好きは残念な気もしますが、そもそもゴミや汚れが入り込む隙間がないので外れないのが正解です。
切れ味に不満を持つようになったら自分で研ぐことができるし、研ぐのが苦手な人はFEDECAに連絡すれば無料で研いでくれるサービスを実施中。研げなくなったら買い替える人が増えていますが、ずっと使い続けてほしいというメッセージなんですね。
親子で焚き火を楽しむために生まれた「鍛造バトニング鉈」なら、研ぎが苦手でも10数年後、成長した子どもに「最初に使った鉈だぞ」と贈ることもできるわけ。扱いやすさとともにちょっとロマンを感じるプロダクトであることが、多くのキャンパーを魅了するのでしょう。
撮影協力/神沢鉄工
>> 神沢鉄工
<取材・文/大森弘恵>
大森弘恵|フリーランスのライター、編集者。記事のテーマはアウトドア、旅行、ときどき料理。Twitter
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