搭載されるエンジンは398.15ccの単気筒。近年人気のホンダ「GB350」やロイヤルエンフィールドの350ccシリーズも単気筒ですが、これらのモデルがロングストロークの空冷エンジンであるのに対して「スピード400」は水冷で、ボアが89mm、ストロークが64mmのショートストロークタイプとなっています。ストロークが伸びるほどトルクフルな特性となり、逆に短くなると高回転まで回るタイプのエンジンとなるので、「スピード400」は後者に該当するタイプです。
最高出力は40PSを8000rpmで発揮。最大トルクは37.5 Nm/6500rpmとなかなかのハイスペックです。それでいて、直立したシリンダーには空冷を思わせる大きめのフィンが刻まれており、クラシカルなルックスも作り出しています。
足回りの装備も現代的で、フロントには43mm径のビッグピストンタイプの倒立フォークを採用。ブレーキもラジアルマウントとされていて、制動力が高そう。リアはモノショックで、ホイール径は前後17インチと走りに対する性能には妥協が感じられません。
シルエットはオーセンティックなバイクらしいものですが、細かい部分に目を向けるとバーエンドタイプのミラーや、アナログとデジタルを組み合わせたメーターなど、モダンなテイストも感じられます。スロットルは電子制御で、切り替え式のトラクションコントロール機構も装備。アシストスリッパークラッチも付いていて、現代的なスペックとされています。
■パンチのあるトライアンフらしい走り
エンジンを掛けると、単気筒らしく歯切れの良い排気音が耳に届きます。聴いているだけでやる気にさせられる元気の良いもので、軽くアクセルを煽ると弾けるような音とともに回転が上昇するレスポンスの良さも感じられました。
操作感の軽いクラッチをつないで走り出すと、さらなる元気の良さに驚かされます。単気筒らしい鼓動感をともないながら、俊敏に反応するエンジンはトルク感も強く、170kgの車体を蹴り出すように加速させます。空冷ロングストロークのようなのんびりした単気筒を想像していると、体がちょっと置いていかれるくらいの力強い加速。
トライアンフは昨年モトクロスマシンも発表していますが、そのマシンからのフィードバックもあるのではと感じさせるくらいのレスポンスです。
街乗りでは少し持て余すくらいの動力性能を感じたので、高速道路に乗って郊外のワインディングにも足を伸ばしてみましたが、高速での巡航でもパワー不足を感じるどころか追い越しや合流での加速も余裕を持ってこなすことができます。400ccで40PSという数値から想像するより、ずっとパワフルに感じられるパワーユニットです。
車体がスリムで軽量なので、ワインディングでは水を得た魚のよう。サスペンションのストロークがやや大きめに取られていることもあって、少し路面が荒れたような峠道でも安心してアクセルを開けていけます。これだけ走ると、同ブランドの大排気量車の販売に影響するのではないか? と余計なことを考えてしまうほどの走行性能でした。
最近の400ccクラスのマシンは、4気筒エンジンを搭載する「Ninja ZX-4R」シリーズがラムエア加圧時で80PSを発揮するなど高性能化も進んでいますが、今回乗った「スピード400」も予想していた以上の高性能。単気筒ですが、2気筒エンジンを搭載するライバルに対しても勝るとも劣らない動力性能を感じました。同じエンジンを搭載した「スクランブラー400 X」も発売されているので、合わせてこのクラスの台風の目となりそうな完成度です。
<取材・文/増谷茂樹>
増谷茂樹|編集プロダクションやモノ系雑誌の編集部などを経て、フリーランスのライターに。クルマ、バイク、自転車など、タイヤの付いている乗り物が好物。専門的な情報をできるだけ分かりやすく書くことを信条に、さまざまな雑誌やWebメディアに寄稿している。
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