右でも左でも構いません。まずステアリングを回すと、力を加えた方向とは反対側のリアタイヤへ、瞬時に荷重がかかります。
ス(ステアリングを切る)
パ(リアタイヤに加重)
!
実際には「スパ!」ほどのタイムラグはありません。
同時です。
まるで、ステアリングとリアタイヤが直結しているかのよう。
次に、アクセルペダルを踏む量を増やしていきます。イメージ的には0.1mm増くらい。1mmも2mmも踏み足す必要はありません。5㎜くらい踏み込んでようやくモサッと反応するようなクルマがある一方、RC Fは0.1㎜でエンジンがクッと反応します。
もう、その気にさせられちゃいます。
そして、高速道路のジャンクション。おあつらえむきのカーブ。ステアリングを切る手に静かに力を加えると、外側のリアタイヤにパンッと荷重がかかるのを感じられ、そこでアクセルペダルを踏み足していくと、踏む量に反応して走行ラインが変わります。ペダルを踏む量をさらに増やせば、どんどん旋回していくイメージ。まるで、アクセルペダルが第2のステアリング、舵取りのための装置になったかのよう。
アドレナリン、どばぁーです。
ヤバイです、RC F。コンサバなFRの乗り味が、カミソリのように具現されています。
センシティブに応えてくれるRC Fではありますが、カリッカリの神経質な走り、というわけではありません。ちょい乗りではむしろ、GT的なキャラクターが前面に出てきます。ガソリンなどを含めた車両総車重は、約2トン。大きな質量を伴ってグイグイ空気の壁を切り裂き進んでいく、ダイナミックなフィーリング。嫌いじゃありません、いや、好きです。
500馬力近くある5リッターのV8自然吸気エンジンは、マッスルで、追い越し加速もシフトダウンすることなく、ブ厚い加速でスピードをスルスルと乗せていきます。静かな車内で音楽でも楽しんでいれば、ロングドライブさえアッという間でしょう。超ラクです。
ですが…。
万一、何かの拍子に、頭の中でカチンとスイッチが入るようなことがあったら、左手のパドルシフトをパンッと手前に引き、アクセルペダルを踏んでください。
シートにガッとカラダが沈んだと思ったら、
フオォーーーーーーーン!
トラクションの塊がアスファルトにたたきつけられ、激しく加速。全身がエンジンの咆哮に包まれます。雄叫びです。
RC Fは、被ってもいない羊の皮を脱ぎ捨てて、牙をむき出しにします。人間だったら二重人格者として、半径1000mくらい遠巻きにしたくなるような豹変ぶり。私は、公道という檻の中にこいつをとじ込めておく自信が全くありません。必ず、サーキットという荒野へ帰したくなります。S660やロードスターといったライトウエイト・スポーツカーではあまり感じられない、超絶の高揚感です。
では最後に、RC Fで一句。
飼い慣らす そんな驕りに 手を噛まれ
お粗末さまでした…。
<SPECIFICATIONS>
☆RC F
ボディサイズ:L4705×W1850×H1390mm
車重:1790kg
駆動方式:FR
エンジン:4968cc V8 自然吸気
トランスミッション:8速AT
最高出力:477馬力/7100回転
最大トルク:54.0kg-m/4800-5600回転
価格:953万円
(文/写真・ブンタ)
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