惚れ惚れとするスタイリングに、“ネットゥーノ・エンジン”を搭載!マセラティ「グラントゥーリズモ」で再認識したエンジン車の魅力

■F1マシンにも使われる技術を採用したエンジン“ネットゥーノ”

ひとことでいって、すばらしい出来映え。ひとつは、F1マシンにも使われる技術を採用したエンジン。そしてそれに合わせて最適チューニングされた、シャシーと足回り。流麗なスタイリングも惚れ惚れします。

グラントゥーリズモのエンジンは、3リッターV型6気筒。フロントに搭載されて後輪を駆動、というオーソドックスなレイアウトにこだわってます。「ネットゥーノ」という愛称が与えられていて、これはマセラティの本拠地だった中部イタリア、ボローニャの広場に立つ海神のイタリア名です。この海神が手にする三叉の鉾は、マセラティのエンブレムにも使われています。

ネットゥーノ・エンジンの特徴は、凝った燃料方式。ややマニアックになりますが、これは試験に出ます(ウソ)。ツインイグニッション方式で、エンジン内部の燃焼室構造も、おおざっぱにいえば2ヶ所に分けられています。アクセルペダルの踏み込み具合など負荷に応じて、使う燃焼室の部分を切り替えていきます。

低回転域で使う部分と、高回転とか、いきなり大きくアクセルを開けたときに使う部分とを分け、場合によっては両方を使ってスムーズな燃焼マナーを実現。さらに連続可変式ターボチャージャーが2つ。こちらも、低負荷から高負荷まで、広く対応するので、パワー感が途切れません。

■鋭い加速感とそれを支えるシャシー&サスペンション

私が、新型グラントゥーリズモを操縦したのは、千葉のサーキットです。これまでに、MC20やグレカーレといったマセラティの他のモデルでもネットゥーノエンジンを体験してはいましたが、公道だったせいもあり、サーキットで「こんなにすごいんだ!」と目からうろこがボロボロと落ちた気分です。

グラントゥーリズモに搭載されるネットゥーノは、グレードに応じて2種類。「グラントゥーリズモ・トロフェオ」には405kW(550馬力)、「グラントゥーリズモ・モデナ」には360kW(490馬力)。最大トルクは共通で650Nmです。私が乗ったのはよりパワフルな前者です。

思わず興奮してしまうのは、発進から速度が上がっていくときの、するどい加速感。オートマチック変速機ですが、マニュアルモードを選択できます。ハンドルのところのパドルで、マニュアルシフト、つまり自分の意思でギアを選べます。

ギアを固定したまま、アクセルペダルを踏み込んでいくと、エンジン回転計の針はレッドゾーンにとびこんでいきます。目盛りは赤くなっても加速は止みません。右のパドルを引くと、1段ギアが上がります。

快適性や経済性も重視されがちなGTですから、やたらと各ギアのレシオが近いわけではないのですが、回転が少し下がっても、ターボはがんがん回っているし、トルクがたっぷりあるので、加速が鈍ることはありません。

エンジンの加速感を支えているのは、剛性感の高いシャシーと、しなやかだけど、しっかり踏ん張ってくれるサスペンションシステム、それに反応のよいステアリングといったもの。クルマにとって重要な要素がびしっとまとめ上げられているのです。そこがうまい。さすが歴史あるスポーツカーメーカーです。

「マセラティは(EVマシンのレースである)フォーミュラEにも参戦したように、近い将来、ラインナップのフル電動化を視野に入れています(実際「フォルゴーレ」なるピュアEVが各ラインナップに設定されています)。でも、だからといって、すぐにガソリンエンジンをあきらめる気はありません。できるだけ長い間、作り続けていきたいと思っています」

サーキットで会ったマセラティ日本法人の技術エンジニアは、そう言いました。ネットゥーノエンジンを体験すると、その言葉どおりだといいなと、強く思うのです。

このエンジンは少しずつチューニングを変えて、スポーツモデルの「MC20」「MC20チェロ」それにSUV「グレカーレ・トロフェオ」にも搭載されています。どのモデルも、このエンジンでもって、すばらしく楽しい運転感覚。クルマはエンジンだという意見が昔からありますが、そこは、実は今も変わっていないように思いました。

【Specifications】
Maserati GranTurismo Trofeo
全長×全幅×全高:4965×1955×1410mm
ホイールベース:2930mm
車重:2140kg
エンジン:2992ccV型6気筒
駆動:RWD
最高出力:150kW@3500rpm
最大トルク:470Nm@1500~2750rpm
変速:8段オートマチック変速機
燃費:11.3km@リッター(WLTC)
価格:2998万円

>> マセラティ グラントゥーリズモ

<文/小川フミオ>

オガワ・フミオ|自動車雑誌、グルメ誌、ライフスタイル誌の編集長を歴任。現在フリーランスのジャーナリストとして、自動車を中心にさまざまな分野の事柄について、幅広いメディアで執筆中

 

 

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