スポーツカーなみの実力を持つヒョンデ「IONIQ 5 N」は乗る人を楽しませてくれる機能が盛りだくさん

■モーターのメリットを活かしたサーキットセッティング

ヒョンデは、「モータースポーツのDNAをフィードバック」(広報資料)させたモデルとしてIONIQ 5 Nを作り上げたといいます。サーキットを走るための数多くの機能が採用されています。

ひとつは、バッテリー温度のコントロール。熱に敏感な性質のため、走行性能に影響を与える駆動用バッテリー。そこで、走行モードに合わせてバッテリー温度を最適化するシステムを使います。

電気モーターのメリットを活かした機能も多彩です。ひとつは、任意で前後輪へのトルク配分が設定できること。本気でサーキットを攻めようという人なら、100%後輪駆動に固定することも可能です。

EVは、アクセルペダルをオフにすると、運動エネルギーを電気に変換してバッテリーへの充電を行う回生ブレーキ機構を搭載しています。摩擦を使うのですが、その力が大きいと発電量が多くなる一方、ブレーキが強く効く効果をもたらします。

IONIQ 5 Nでは、大きな回生ブレーキを減速のために使います。小さなカーブが連続する個所(サーキットのシケインなど)では、アクセルペダルに載せた足の力を緩めると、最大0.6Gの強力な減速効果が得られます。そこで少し踏めば、また強いトルクで前に進みます。それによって、車両の動きまでコントロールし、素早くカーブに入り、コーナリングラインが乱れず、そして素早くカーブから脱出することが可能になっているのです。

直線でより強い加速が欲しいときは、ハンドル近くに設けられた「NGB(Nグリンブースト)」なる赤いボタンを押します。すると10秒間だけ最高出力が448kWから478kWに、最大トルクも740Nmから770Nmへとアップ。どんっという加速力が得られます。

さらに、前後左右輪の駆動比率などをコンピュータが判断し、ドリフトが容易に行えるユニークな「Nドリフトオプティマイザー」も目玉の機能。ドリフトなんてしたことない、って人にも、かなり簡単にドリフトキング(とまではいかないかもしれませんが)への道が拓けるのです。

乗る人を楽しませてくれるために、モータートルクを制御して、マニュアル変速機のような変速フィールを得られる機能も、かなり楽しめます。パドルシフトを引くと、エグゾーストノートを模した勇ましいサウンドとともに、減速でエンジン回転が上がるのと同じ感覚が味わえます。

 

■日本向けに足まわりを調整

私はこれらの機能を、千葉県のサーキットでの試乗で試せました。ひとことでいうと、すばらしく面白い。どれもよく出来ているのです。クルマ好きなら、乗れば笑顔になること間違いなし。

日本向けに足まわりの設定はやり直したそうで、段差越えなど、日本に多い道路の不整でも、通過するときしなやかに凹凸を乗り超えます。いっぽうで室内騒音はごく低く、ここがV8とかの大排気量のスポーツSUVとの最大の相違点といえるかもしれません。

「将来は、同じような競合車が他社からも出て、国際規格のシリーズレースが生まれるのが希望です」。ヘッド・オブ・Nブランド&モータースポーツの肩書きを持つバイスプレジデントのティル・ワルテンバーグ氏の言です。

そんなスポーティなモデルですが、公道ではたいへん気持ちがいい。乗り心地は快適だし、操縦性で神経質なかんじはいっさいなし。ホイールベースは3000mmあり、前席後席とも室内は広い。EVならではのパッケージングの妙といえるでしょう。そこも驚きでした。

日本での発売は、2024年6月5日から。価格は「900万円前後」と、ヒョンデ・モビリティ・ジャパンはしています。

【Specifications】
Hyundai Ioniq 5 N
全長×全幅×全高:4715×1940×1625mm
ホイールベース:3000mm
モーター:前後1基ずつ
駆動:全輪駆動
最高出力:478kW
最大トルク:770Nm
バッテリー:リチウムイオン84.0kWh
価格:未定

>> Hyundai Mobility Japan

<文/小川フミオ>

オガワ・フミオ|自動車雑誌、グルメ誌、ライフスタイル誌の編集長を歴任。現在フリーランスのジャーナリストとして、自動車を中心にさまざまな分野の事柄について、幅広いメディアで執筆中

 

 

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