■機能も80年代レトロなベーシック設計
まずは外見から。今回試したのは“Blue”ですが、この水色っぽいカラーリングに80年代のオリジナルWalkmanっぽさを感じてしまいます。本体の素材はアルミニウム合金製ダブルカラーで、オーディオとしての剛性は作り込まれています。
そして懐かしさ全開なのが、デジタル化されていないボタン操作。押し込むと“ガチャ”っと音がして押し込んだままになるところは、当時のカセットプレイヤーの操作感そのまま。テープって、再生したままちょっと早送りしたり巻き戻したりする、サーチが便利なんですよね。
ちなみに、4ボタンは再生・巻き戻し・早送り・停止の割り当て。「あれ、録音ボタンは?」と当時を知る人は言ってしまいそうですが、残念ながらFIIO「CP13」は再生専用機です。
音量操作はもちろんアナログボリュームポテンショメーターを搭載。指先で音量を微調整できるので、これは今でも使いやすいデザイン。
バッテリーは内蔵で最大13時間再生。音声出力は3.5mmのステレオミニ(イヤホンジャック)のみ。ワイヤレスイヤホンを接続可能なBluetooth対応も欲しいところですが、ポータブルカセットプレーヤーだし仕方ない(?)ですね。
ポータブルカセットプレーヤーとなると、毎回話題になるのが対応するテープの種類。
FIIO「CP13」のカセットテープ再生メカは中国製で、FIIOが独自の高音質化チューニングを行っています。超大型純銅製フライホイールに4.2V電源で駆動する高電圧モーター、高品位な磁気ヘッドを採用しています。
対応テープはType I(ノーマルテープ)のみと日本国内では案内しています。実のところType II(ハイポジテープ)やType IV(メタルテープ)もかけると音自体は出るのですが、対応イコライザがないため本来の音質にはなりません。また再生可能なテープは片側60分までのサポート(実際にはそれ以上もかかります)。
僕が今回持ち出したのは、昨年ORIONのラジカセをレビューした際に用意した中古テープ。当時ちょっと音源を録音しておいたのと、購入時からラジオらしき音源が録音済みだったんですよね。
FIIO「CP13」の音質については、カセットに録音済みの音源で確かめるしかありません。録音済みだったPet Shop Boysの『Go West』(1993年リリース)を聴きました。
一聴した感想は“テープの音”。品質も確かではない中古テープによる試聴なので、歌声は痩せてピッチが怪しくなっていたし、ヒスノイズはあるけど…懐かしPet Shop Boysのポップな歌声をカセットで聴けて思わずニンマリ。
同じ曲をスマホで再生すると、やはりデジタル音源の方が音質はいいのですが、FIIO「CP13」のハードウエア部分、純粋にイヤホンジャックの出力は、カセットにしてはS/Nの良さそうな音だなと感じました。これは現代のポータブルオーディオの基準のおかげでしょう。
FIIO「CP13」はポータブルなんだから外で音楽を聞かなくては! と電車に持ち出してみると、ポータブルになるとなおさら、手に持ってガチャガチャ操作して使うのが懐かしくて。
新作ポータブルカセットプレーヤーFIIO「CP13」、この所有感とレトロ感、そしてポータブルで見せつける目的で使うのもアリなんじゃないかなと思いました。
>> FIIO
<取材・文/折原一也 撮影協力/エミライ>
折原一也|1979年生まれ。PC系出版社の編集職を経て、オーディオ・ビジュアルライター/AV評論家として専門誌、Web、雑誌などで取材・執筆。国内、海外イベント取材によるトレンド解説はもちろん、実機取材による高画質・高音質の評価も行う。2009年によりオーディオビジュアルアワード「VGP」審査員/ライフスタイル分科会副座長。YouTube
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