■【川上鱒寿し店】半レアの鱒の身がうますぎる一品!
まず最初は地元でコアな人気を誇るという「川上鱒寿し店」の「鱒寿し・1段」からいただきます。「川上鱒寿し店」は大正15年創業で、スタンダードな「ますすし」の製法を守りながらも、独自の繊細な作り方をしているのが特徴とのこと。上品なのに忘れられないその味わいに、売り切れてしまうことも多いとのことですが、果たして実際の味わいはどんな感じでしょうか。
まず、鱒の身は半レア状態で押しすぎていない点が筆者の好みとも合致。そして、酢飯は甘酢を使っているのか、それほど酸味が強くなく、お米の風味をギリギリまで引き出している印象。
これらが合わさることで優しい味わいを実現しており、上品な旨みが口いっぱいに広がります。地元で人気というのも十分納得。特に舌の肥えた人にオススメしたい一品だと思いました。
>> 川上鱒寿し店
■【元祖せきの屋】100年超えの「ますすし」は完成度高き伝統の味!
続いていただくのが100年以上の歴史を持つ「元祖せきの屋」の「ます寿し 小一重」。「味一徹 伝統の技」という謳い文句の通り、伝統的な「ますすし」の製法を頑なに守り抜いており、こちらも地元ではよく名の知れたブランドです。100年以上前から続くその味わい、果たしてどんな感じでしょうか。
鱒の身はすっかり押された印象で酢飯と渾然一体となり、「伝統の味はこれなのだ」と強く実感しました。口に入れた瞬間に広がる、鱒の身の優しい風味と酢飯の米感は、どこかクラシカルに感じながらも、これがまた癖になる味わい。古き良き富山の景色を思い浮かべながらいただくことで、その美味しさが数倍アップしそうです。こちらもまた上品な味であり、「富山の食の奥ゆかしさ」を感じるほどでした。
>> 元祖せきの屋
■【吉田屋鱒寿し本舗】漁業出身ブランドだけに鱒の身うますぎ!
続いて、「吉田屋鱒寿し本舗」の「鱒の寿し一重」をいただきます。今回食べ比べした4ブランドの中では最も歴史が若い「ますすし」で、生業として確立されたのが昭和21年。しかし、「吉田屋鱒寿し本舗」の先祖は、かつて富山藩に勤め、当時の神通川(現・松川)にかかっていた舟橋の守役に従事するかたわら、漁業を営んでいたと言います。そこから「ますすし」の生産に着手したのが発端とのことで、特に鱒の味わいには期待が膨らみます。
口にしてビンゴ! やはり酢飯が少なめで、その代わりしっかり押された旨み強めの鱒が厚目にカットされており、これが美味。一般的にご飯物はお酒のアテには重すぎるという意見が多いものですが、この絶妙のバランスによっておつまみとしても十分好まれるであろう一品だと思いました。
口に入れた瞬間、優しく広がる酢の感じも素晴らしく、晩酌好きの方へのお土産には一番向いている「ますすし」のようにも思いました。
>> 吉田屋鱒寿し本舗
■【ますのすし本舗 源】やっぱり外せない定番。みんな大好きな優等生的味わい
そして、最後にいただくのがやっぱり外せないど定番「ますのすし本舗 源」の「ますのすし一重」です。料亭として出発した後、駅弁業に着手。全国に「ますのすし」の名とその味を知らしめた一大ブランドで、そのパッケージはあまりにも有名です。
「ますのすし本舗 源」の「ますのすし」は伝統的な製法を守り抜いた味わいだと思いますが、ここまでの他ブランド食べ比べを経て、どう感じるかを改めて口にし確認したいと思います。
程よく押され旨みを十分感じる鱒、程よい酸味の酢飯とのバランスは、まさに黄金比的な印象。やはり優等生的な安定した味わいだと思いました。
この安定感にして、税込1800円というコストパフォーマンスの良さもありがたく、どの「ますすし」を買おうか迷った際には、「ますのすし本舗 源」を買っておけば間違いがないとも思いました。
>> ますのすし本舗 源
■伝統守り抜き系から個性派まで実に多彩な富山の「ますすし」
ここまで富山の「ますすし」4ブランドを食べ比べしましたが、それぞれ伝統を守り抜いた味わいだったり、独自の個性を打ち出したものだったりと、実に多彩であることがわかりました。
いずれも絶品だったことには違いがありませんが、それぞれの個性や特長を前に、自分好みの「ますすし」をチョイスするのが良いと思いました。
酒飲みの筆者個人的には「吉田屋鱒寿し本舗」がかなりオススメでしたが、ここまで読んでくださったあなたはどのブランドの「ますすし」が気になりましたでしょうか。本記事を参考にあなた好みの「ますすし」をゲットしていただければ幸いです。
<取材・文/松田義人(deco)>
松田義人|編集プロダクション・deco代表。趣味は旅行、酒、料理(調理・食べる)、キャンプ、温泉、クルマ・バイクなど。クルマ・バイクはちょっと足りないような小型のものが好き。台湾に詳しく『台北以外の台湾ガイド』(亜紀書房)、『パワースポット・オブ・台湾』(玄光社)をはじめ著書多数
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