1900馬力のハイパーGT! “f”のエンブレムを初めて掲げたピニンファリーナ「バッティスタ」はジェット機のような加速感

■「フロントに堂々とfのエンブレムを掲げた初のクルマ」

2024年5月に東京に持ち込まれた「バッティスタ」は、バッティスタは、ピニンファリーナの創業者、バッティスタ・ファリーナからの命名。

「フロントに堂々とfのエンブレムを掲げた初のクルマです」と、アウトモービリ・ピニンファリーナのパオロ・デラッチャCEOは、発表会場の在日イタリア大使館(東京・三田)で誇らしげに語りました。

内容はとにかくすごい。ホイールイン・モーターといって、4つの車輪にモーターがひとつずつの全輪駆動。従来は機械式の差動装置などを使っていましたが、モーター出力の制御で、車両の挙動をコントロールしています。

私はこのバッティスタに、箱根で試乗しました。全長4912mm、全高1214mm、全幅2240mmと、かなり低い車体で、ドアは前ヒンジで上に跳ね上がる、いわゆるシザー(ハサミ)タイプ。

 

■箱根ターンパイクを貸し切って試乗! 世界150台限定生産

車内は、レースカーのようにタイトで、まさに“着る”かんじ。液晶モニターがいくつもあって、車両の設定を行います。ドライブモードによって、おもしろいようにクルマのキャラクターが変わります。街中で快適に走るためのモードもあれば、サーキットでタイムアタックするのにぴったりなモードも、というぐあい。

箱根では、高速コーナーが連続する箱根ターンパイクをなんとぜいたくにも貸し切りにして、1台だけの占有試乗でした。同乗したインストラクター(レーシングドライバーのケイ・コッツォリーノ氏)が、ストレートにさしかかったときは「床までアクセルペダルを踏んでみて」とか、コーナーに進入したときは「ここでもっと強く踏んで」とか、アクセルペダルの踏み具合を指示してくれました。

ストレートではジェット機のような加速感です。自分が操縦しているのに、離陸するんじゃないかって怖くなるぐらい。

コーナリングでは、車載コンピューターが、アクセル開度とか横Gのかかりかたとかから、ドライブしている私のクセを学習して、トラクションコントロールなどを調整。私の能力の範囲で最大限のタイムをたたき出せるよう介入するので、「速いし、かつ安心」(コッツォリーノ氏)とのことでした。

150台限定生産とのことで、オーダーが入ると、ピニンファリーナのデザイナーと綿密な打ち合わせをしながら、車両を仕立てていくことになるそうです。

 

■外板、内装もクライアントの自分好みに

今回のブルーの車体のモデルは「バッティスタ55」と名付けられたサンプル。バッティスタ・ファリーナ(ピニンはバッティスタのニックネーム)の代表作のひとつといわれる、1955年発表のランチア・フロリダという4ドアのハードトップクーペのイメージを活かしたんだそうです。

外板の塗り分けは、フロリダを参考に。内装には、フェラーリなどでも知られるポロトロナフラウ社に特注したエージング加工のレザーが張られ、これもあえてちょっと古めかしいイメージを活かしたものなんだとか。かなり手がかかっています。

▲パオロ・デラッチャCEO

こういうふうに、クライアントは自分好みの仕様に仕立てられます。ほかにも、ピニンファリーナの伝統的な作品との共通性をもりこんだ「バッティスタ・アニヴェルサリオ」や、モータースポーツ界のレジェンド、ニーノ・ファリーナにオマージュを捧げる「バッティスタ・エディツィオーネ・ニーノ・ファリーナ」という提案もあります。

バッティスタの価格は220万ユーロから。同時に、東京で一緒に公開されたよりスペシャルな「B95」も控えています。小型フルオープンモデルを指すバルケッタなるボディ形式で、10台限定です。

このあとは「パワートレインが今回はたまたまバッテリー駆動がコンセプトに合っていたので、エンジン、ハイブリッド、フレキシブルに対応していきたいと考えています」と、前出のデラッチャCEO。それに「より買いやすいモデルの計画もあります」とのこと。ピニンファリーナの冴えた手腕に期待しようではありませんか。

日本では、SKY GROUPが正規代理店。

【Specifications】
全長×全幅×全高:4912mm×1214mm×2240mm
ホイールベース:2745mm
モーター:電気モーター×4
駆動:全輪駆動
バッテリー容量:120kWh
最高出力:1400kW
最大トルク:2340Nm
一充電あたりの走行距離:476km
価格:220万ユーロ〜

>> アウトモービリ・ピニンファリーナ バッティスタ

<文/小川フミオ、写真/Automobili Piinfarina>

オガワ・フミオ|自動車雑誌、グルメ誌、ライフスタイル誌の編集長を歴任。現在フリーランスのジャーナリストとして、自動車を中心にさまざまな分野の事柄について、幅広いメディアで執筆中

 

 

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