原付二種だけどフルサイズ! 走りも良くて乗りやすいヤマハの125ccバイクとは

フロントフェイスは3つのプロジェクターライトが並んだモビルスーツ的なもの。好みが分かれる部分ではありますが、個人的には歴代「MT」シリーズの顔の中でも好きな方に属します。ボリューム感のあるタンクデザインや、細く切れ上がったシート後端などもストリートファイターの文脈に沿ったデザインといえます。

実車を目の前にして感じたのは、原付二種クラスでありながら細部のクオリティが高いことです。ペイントの質感も高く、タンク周りのデザインもボリューミー。125ccの単気筒だとエンジン周りがスカスカした印象になってしまう場合もありますが、アンダーカバーなどで上手く補っています。マフラーにもカーボンのヒートガードが付くなど、見た目はワンクラス上の完成度で所有する満足感も高いでしょう。

フロントフォークはゴールドのアウターチューブを採用した倒立式。インナーチューブ径は37mmで剛性も迫力も十分です。ブレーキキャリパーはバイブレ製の2ポッドで、ディスク径は282mm。リアサスペンションはモノショックで、フレームがかつてのデルタボックスを思わせる形状なのもグッと来るポイントです。

 

■リターンライダーにもおすすめできる乗り味

ライディングポジションは着座位置が前方になる「MT」シリーズらしいもの。シート高は810mmですが、車体が細くシートの前方が絞り込まれていることもあり、足付き性は良好です。アップタイプのハンドルなのでリラックスした乗車姿勢で乗れます。同じアップハンドルの「XSR125」よりもハンドルが近く、幅も狭いので体格が小さい人でも乗りやすそうです。オプションでシート高を28mm下げるローダウンリンクも用意されています。

エンジンは可変バルブ(VVA)機構を採用した水冷SOHCで、最高出力は15PS/10000rpm、最大トルク12Nm/8000rpm。7400rpmでバルブタイミングが切り替わる機構なので、高回転では爽快な吹け上がりが味わえながら、低中回転域でのトルクも確保しています。

このエンジン、かなり完成度が高いのですが、3車種で味付けが異なり、「MT-125」は高回転まで回したくなる特性。回さなくても走れるエンジンなのですが、ついつい高回転域を使いたくなる味付けになっています。

このクラスの4ストエンジンは、低中回転域のトルクを重視したモデル(例えばホンダの「CT125・ハンターカブ」や「モンキー125」など)では高回転があまり回らず、高回転域を重視したモデル(スズキの「GSX-R125」など)は低回転のトルクが物足りないフィーリングになりがちですが、このエンジンはそこを両立しているのが魅力です。昔の2スト125ccを知る人でも「今どきの4ストはこんなに走るのか」と感じるでしょう。

ハンドリングも結構アグレッシブなフィーリングです。前重心でクイックに曲がるのが気持ちいい特性。ワインディングを攻めるような走りも得意ですが、街中の狭い交差点を曲がるだけでも楽しくなってくる稀有な一台です。足回りの限界も高いので、もちろん高速コーナーを曲がっても安定しています。

ヤマハはこのクラスを、バイクに乗り始めたエントリー層の入口として想定しているようですが、フルサイズの車体は今後大きな排気量にステップアップしたいと考えている人にはうってつけ。また、久しぶりにバイクに乗るリターンライダーも、このマシンから乗ってみるとライディングの基本を思い出させてくれそうです。

このクラスのレジャーバイクは、ホンダの独壇場的な状況ですが、フルサイズで考えるとヤマハの3モデルが性能やバランスでは一歩リードしていると感じられます。なかでも「MT-125」は個人的にはベストバランスと思える完成度でした。

☆SPEC
サイズ:2000×800×1070mm
重量:138kg
エンジン:124cc水冷単気筒SOHC4バルブ
最高出力:15PS/10000rpm
最大トルク:12Nm/8000rpm。7400rpm
価格:49万5000円

>> ヤマハ「MT-125」

<取材・文/増谷茂樹

増谷茂樹|編集プロダクションやモノ系雑誌の編集部などを経て、フリーランスのライターに。クルマ、バイク、自転車など、タイヤの付いている乗り物が好物。専門的な情報をできるだけ分かりやすく書くことを信条に、さまざまな雑誌やWebメディアに寄稿している。

 

 

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