スバルの水平対向エンジンには、6気筒もあります。幸運にも、ごく短時間ですが、今回、過去の“フラット6”搭載車に乗ることができました。
絵に描いたようなエッジシェイプが特徴の「アルシオーネ」は、1985年のデビュー。
当初4気筒で登場したものの、発売直後から膨れ始めたバブルに乗って、2.7リッター6気筒を追加することに。なお、このクルマの内外装については、いいたいことが多々ありますが、今回は割愛いたします。
最高出力150馬力、最大トルク21.5kg-mの“フラット6”は、ドローンとした回転フィールの、少々“時代がかったエンジン”といった感じ(試乗車は1989年式)。なんというか、クルマを構成する個々の要素が、今ひとつかみ合っていない印象を受けました。ブランドイメージのステップアップを図る当時のスバルの悪戦苦闘がそのままカタチになったかのような、そんなところも含めて、どうにも憎めないスタイリッシュクーペです。
もう1台の6気筒モデルは「アルシオーネSVX」。試乗車はデビューイヤーの1991年式で、レザーとアルカンタラ内装の凝った仕様。これまた内外装の詳細については涙をのんで割愛し、3.3リッター6気筒エンジンの感想を。
240馬力、31.5kg-mのアウトプットは、決して目をむくスペックではありませんが、穏やかでスムーズ。ひと言でいって“大人のエンジン”ですね。ブランドのイメージを牽引するスペシャルモデルとして見ると、当たり前ですが、初代アルシオーネよりひと皮もふた皮も剥けた完成度。アルシオーネの系譜がココで途絶えてしまったのがまことに残念です。
かつて、このクルマの試乗記で「結局、400万円のスバル車を買う人はそうそういない」というフレーズを読んだ記憶があり、当時は「まあ、そうだよなぁ」と納得しました。でも、今だったらどうでしょう? スバル車ヒストリーの“あだ花”と済ませてしまうには、あまりに惜しいクルマです。