読書と食欲の秋!名作「食エッセイ」5冊のメニューを作ってみた!

■読み継がれる日本の食のあり方 辰巳浜子『料理歳時記』

 

日本の家庭食のバイブル的一冊。食べることが好きなすべての人に、ぜひオススメしたい本です。

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著者の辰巳浜子は、明治37年生まれ、日本の料理研究家の草分け的な存在です。とはいえ、著者自身はあくまで「主婦」としての立場で料理を紹介していました。

『料理歳時記』には、昔の山の手の奥様たちはこうだったのかしら…と感じさせる、軽妙ながら気位の高い語り口で、マダム辰巳の食卓が描かれています。

著者の少女時代の東京の食の情景や、企業人の夫に随行して暮らした土地土地の美味しいもの、鎌倉に移り住み自ら畑を耕す中で見つけた四季の味……日本の美味しいものがこれでもか!と詰まっている一冊です。

ちなみに著者は日本を代表する料理家である辰巳芳子氏のお母さんでもあります。

書中で辰巳浜子は「明治も百年、味も遠くなりました」と、どこかカラリとつぶやいていますが、そこからさらに40余年。こういった良書が刊行され続けているおかげで、大切な味が残っています。

この本の中からつくって食べてみたのは「茄子の丸揚げ」です。

日々美味しくなってくる秋の茄子を、丸ごと油で揚げるシンプルな料理。

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ポイントは、茄子の皮が爆ぜないように事前に竹串でぶすぶす穴を開けておくこと。

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間抜けなことに油が少ししかありませんでしたが、茄子の半分程度の高さの油でも約2〜3分で中までトロトロの揚げ茄子ができました。

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生姜醤油で食べると、茄子のきめ細やかさと油の美味しさが相まって、本当に素晴らしい!

秋の茄子を最も美味しく食べる方法の1つなのではないでしょうか。

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《参考文献・引用元》
辰巳浜子、2002年(改版)、『料理歳時記』中央公論新社
http://www.chuko.co.jp/bunko/2002/09/204093.html

 


■牡蠣の巨匠が面白い!『牡蠣礼讃』

 

さあ、秋! 月の名前にもRが入って、今シーズンもたくさん牡蠣を食べるぞ!!

……でも、このRの話って本当に正しいの?

そんな好奇心の強い牡蠣好きに、ぜひ読んでほしいのがこちらの『牡蠣礼讃』。

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著者の畠山重篤氏は、牡蠣養殖の第一人者にしてエッセイスト、NPO法人・森は海の恋人の代表であり、京都大学フィールド科学教育センター社会連携教授もつとめる、牡蠣のスーパースターです。

『牡蠣礼讃』は、牡蠣の現場を誰よりも知り、また牡蠣に大きな愛情を注ぎ続ける著者の世界を少し垣間見ることのできる名著です。

前述の「Rの月」の話にも関連する牡蠣のライフサイクルや、養殖場の四季。

日本の牡蠣を英雄たちの物語。

はるかアメリカまで縦横無尽に駆け回る牡蠣をめぐる旅。

さらには松尾芭蕉の足跡と牡蠣の産地の関連を探る、まるでミステリーのような章も。

まだまだたくさん、とにもかくにも牡蠣、牡蠣、牡蠣に次ぐ牡蠣!

牡蠣に恋する皆様、宮城の牡蠣のピークは3月だそうです。ぜひトップシーズンに向けてこの『牡蠣礼讃』を読みながらウォームアップしましょう!

つくってみたのは「オイスターショット」。著者の畠山氏がアメリカの牡蠣を訪ねる旅で出会う、なんとも洒落たカクテルです。

牡蠣を数粒グラスに入れたら、そこにトマトジュースとウォッカを注ぎスパイスをふりかけ、一気にグイッとあおりましょう。

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書中では、畠山氏の父上が愛したというアメリカ西海岸の牡蠣「オリンピアオイスター」でつくられるのですが、あいにく入手するのはなかなか困難。筆者は、日本のマガキで気分だけ味わいました。

ウォッカ多めが美味しい!

舌先から胸までカッと火がつき、トマトの酸味の後に牡蠣の旨味と塩気が残ります。牡蠣単体で食べるときの濃密な味わいとはまた違う、「海の味」そのもののような純粋さです。

昨今ではオイスターショット、あるいはオイスターシューターの名前で日本でも普及し始めているので、お酒が得意な人は是非試してみてください。

《参考文献・引用元》
畠山重篤、2006年、『牡蠣礼讃』文藝春秋
http://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784166605422

 


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