■昔の人は超破天荒!『華やかな食物誌』
最後に少し毛色の違う1冊を。
『華やかな食物誌』は、異端の世界をエレガントな美学とともに語り尽くした巨人、澁澤龍彥の随筆です。
思想に美術、毒薬、美女……随筆では様々な題材を扱った澁澤が「食」にスポットライトを当てています。
古代ローマやフランスの宮廷の貴族達や、フランス革命の頃に型破りな宴会の数々で人々の度肝をぬいたグリモ・ド・ラ・レニエールなど、様々な美食家たちの食卓を紹介しています。
おおよそ現代の日本では考えられないような、超アバンギャルドな食欲の鬼たちの奇行に思わず笑ってしまうような場面も多く、とても興味深い内容です。
せっかくなのでご馳走をつくってみようとは思ったのですが、とにかく食材がとんでもない。
「駱駝の踵」やら「大山鼠の細切り」とか「青海亀」とか……さすがにこれは通販でも買えそうにない!
ということで、材料が最も手近にありそうなものとして「スペインの赤ピーマン入りの卵のプディング」を作成してみました。
16世紀、トスカーナ大公フランチェスコが食中食後を問わず大量に食べていたという一品。レシピが書いてあるわけではないので、「こんな感じかな?」という想像の産物ですが。
卵と赤ピーマンは必須。あとは風味づけに玉ねぎ、にんにく、生クリームを使うことにしました。
野菜類は全てオーブンでじっくり焼いて、すり鉢でペーストに。
ペーストを溶き卵と生クリーム少々とともによく混ぜ合わせ塩胡椒で味付けし、油を塗った耐熱容器に入れます。天板に水をひいたオーブンで220度15分!
こんなのができました!
もちろんトスカーナ大公フランチェスコが食べた「スペインの赤ピーマン入りの卵のプディング」とは違うものでしょうが、結構美味しい。
パプリカの甘みと香りがきいたなめらかオムレツ。そんな感じです。サラダでも添えれば、カフェランチ風の何かになるかもしれない予感がします。
めくるめくようなゴージャスな料理から、正体不明の妖しいものまで様々な食べ物が出てくる『華やかな食物誌』。
想像力全開で、中世の貴人や奇人の食卓を楽しんでみてはいかがでしょうか?
《参考文献・引用元》
澁澤龍彦、1989年、『華やかな食物誌』河出書房新社
http://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309402475/
読書と食を両方楽しめる「食エッセイ」。たくさんの名著があるので、ぜひ読んだり、つくってみたり、食べてみたりしてはいかがでしょうか?
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(文/くぼきひろこ)
美食・カルチャー・ライフスタイル・クルマ・ゴルフ・巷の美女etc……対象は様々に、雑誌・ウェブサイト等の各種媒体にて活動中のフリーライター。「人の仕事のすべて。そして、その仕事から生み出されるすべてのモノゴトが面白い!」と津々浦々の興味津々で取材・執筆を行う。