■公式登録車両700台、「GTI」の祭典
ドイツ国内はもとより、英国(熱心)、北欧、南欧、東欧、さらにベラルーシにいたるまで、各所から自走でやってきた車両は、スポーティなチューンナップを施されているものが多く、なかにはピックアップやキャンパーやリムジンなどの改造ボディもありました。
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▲ピックアップなどさまざまな改造ボディもまた楽しい
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▲チューナーによる展示も来場者の注目を集めていた
もうひとつ、このミーティングが評価されているのは、ファン同士の情報交換の場だからです。チューニングのやりかたや、ショップやパーツの情報をやりとりするのに、またとない機会を提供してくれています。
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▲来場者どうしの情報交換が駐車場でさかんに行われた
そのため、24年の「GTI ファンフェスト」には公式登録した車両が700台。やってきた車両は2500台にのぼるというのがVWの公式発表です。実際、会場周辺に多種多様な車両が列を作っていたのが壮観でした。
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▲会場への入場を待つ来場者が長い列を(おとなしく)作った
■紆余曲折の祭典開催。そしてID.シリーズの登場でGTIはどう変わるか
ゴルフGTIの初代が登場したのは1976年。当初は、こんなクルマ売れない、と考えたVWの経営陣は5000台の限定にして、それでも売れれば万々歳としていたといいます。ところが実際は大ヒット。日本への正式輸入が始まったのは2代目からですが、以降は現在の8代目にいたるまで、着実な販売を記録しています。
GTIファンフェストにやってきたのは、歴代のGTIをはじめ、4輪駆動のRに加え、限定車種や、モータースポーツ車両、それにポロやシロッコやルポといった他車種のスポーツモデル。クルマ好きには飽きない内容でした。
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▲2022年にVWが販売したマウンテンバイクを搭載した車両
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▲VW車でもってラリーで活躍したヨッヒ・クライント氏
「GTIトレッフェン(ミーティングの意)」と呼ばれていたオリジナルイベントが最初に開催されたのは1982年。GTIファンのひとりが、ベルター湖というオーストリアのリゾートでミーティングを開くことを思いつき、あっというまに人気を集めるようになりました。
2019年まで開催されましたが、イベントがあまりにも大きくなり、野生生物保護や環境保全を重視する地元の自治体から懸念が寄せられるようになったのと、コロナ禍により、いらい4年の空白が生まれます。
あらたに主催者となったのがVW本社で、独ウォルフスブルグのVW本社ちかくの「フォルクスワーゲン・アレーナ(アリーナ)」を会場として提供。ちょうどゴルフの50周年でもあり、ミュージアムから車両を持ち出すなど、貴重な展示も楽しませてくれました。
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▲VW乗用車部門のトマス・シェファーCEO
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▲駐車場でインタビューに応えるアンドレアス・ミント氏(左から2人め)
ジャーナリストとしての興味は、ID.シリーズの展開でみられるように、ラインナップのピュアEV化を進めるVWの方針と、ガソリン車であるGTIへのあこがれ喚起が矛盾していないか、ということでした。
「私たちが主催者となったことで会場には(ピュアEVの)ID.GTIのコンセプトモデルを展示するなどして、GTIのエモーションはそのまま未来へとつなげることを分かってもらえたのではないでしょうか」。マーケティングなどを担当する取締役のメンバーであるマルティン・ザンダース氏は、そう答えてくれました。
<取材・文/小川フミオ>
オガワ・フミオ|自動車雑誌、グルメ誌、ライフスタイル誌の編集長を歴任。現在フリーランスのジャーナリストとして、自動車を中心にさまざまな分野の事柄について、幅広いメディアで執筆中
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